映画・な行

2006年8月 8日 (火)

『28日後・・・』  “Help!”の代わりに“Hello!”という言葉を 

『プルートで朝食を』を観て、元々好きだったけど更に更に好きになってしまったC.マーフィー。怖いのは苦手なので観たいけどぜーったいに観られん!無理だ!と公開当時は思っていた、彼の出世作の『28日後・・・』にとうとう手を出してしまいました。

28日後...特別編 DVD 28日後...特別編

販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
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物語をとても乱暴にまとめてしまうと、いわゆる‘ゾンビ物’の部類に入るらしい(‘ゾンビ’ではなく‘感染者’という言葉が使われていましたが、彼らの風貌や性質は明らかにゾンビだと思われます)。凶暴化した猿が原因で発生した‘死のウイルス’。それに感染した人間が同じように凶暴化し、次々に他の人間を襲っていくようになってしまったイギリスが舞台です。
最初の感染から28日経った後、見知らぬ病室で主人公のジムは目覚めました。交通事故に遭い意識不明だったため何も事情を知らない彼は、自分のほかに誰もいない病院を後にして町をさ迷い歩き、人間のようでいて人間でない‘感染者’に襲われかけます。その彼を救ったのはセリーナとマーク。彼らから事の顛末を聞いたジムは、両親の身を案じてセリーナたちと一緒に実家へ向かいますが、既にふたりとも亡くなった後でした。そしてそこにも感染者が。彼らに襲われ感染してしまったマークを容赦なく殺すセリーナ。
仲間を失い行く当てもなく移動を続けていたジムとセリーナは、同じように感染を免れふたりきりで暮らしている父娘、フランクとハンナに偶然出会います。4人は行動を共にすることになり、ラジオから聞こえてきた軍隊の‘感染に対する答え’という言葉を頼りにマンチェスターへと向かうのですが・・・。

以下ネタばれ。

28dayslater_0802_1_1怖いのは苦手なのになぜ公開時にちょっと魅かれていたかと言うと、キャッチコピーがこんなだったから。

「誰もいなくなってしまった街に向かって、
それでも僕たちは叫び続ける。
“HELLO!”

このコピーどおり、感染者に気付かれる危険性を承知していながらもジムは“Hello!”と叫び、フランク父娘は自分たちの部屋の周りをたくさんの電飾で飾りながら、“Help!”というよりは“Hello!”という気持ちで誰かが現れるのを待っていました。そしてセリーナはそれまでそんな言葉の存在を忘れていただろうけれど、ジムやフランクたちに出会うことで“Hello!”という精神を思い出したに違いありません。

マンチェスターへ向かう旅の中で擬似家族のようになっていく4人。この結びつきが、後々ジムとセリーナに変化をもたらすことになります。

たとえ感染者でも、相手を殺すことにためらいを感じていたジム。「感染したらあんたもすぐ殺す」とジムに言い放ち、自分が生き残ることを第一に考えていたセリーナは、フランク父娘のことも‘足手まといになりそうだから’見捨てていこうとしていました。
しかし、‘擬似家族’の父親的存在だったフランクが死に、軍のラジオ放送が(すんごく言葉は悪いのですが)兵士たちにあてがう女性をおびき寄せるためのでっちあげにすぎなかったことを知った時、ジムとセリーナはそれまでとは正反対の行動をとるのです。

28dayslater_0802_2_1

ふたりを助け出すために兵士相手に人が変わったように闘うジム。感染者ではない人間を殺すことにも全く躊躇しません。
一方のセリーナはハンナを守ることを最優先し、また、ジムがまるで感染者になってしまったかのように兵士たちを襲うのを目の当たりにしても、最初の言葉どおり‘すぐ殺す’ことはできなくなっていました。

監督の言わんとしていたことは全然違うのかもしれません。ですがわたしは、ジムたちのこんな姿を見て、ものすごく過酷な状況にあっても(過酷な状況だからこそ?)人は誰かとつながっていたいと考え、そのつながりはいろいろな方向に(良い方向にでも、恐ろしい方向にでも)人を変化させる力を持っているものなのかな、と思ったのでした。

動物愛護団体(?)のメンバーがウイルスの感染源である猿を無理矢理逃がそうとしたことから始まったこの物語。わたしが勝手に見つけたメッセージのようなものとは裏腹に、皮肉に満ちてもいます。
‘危険な’猿に襲われたメンバーたちは、当初の目的とは反対にその猿を殺そうとする。そして、数少ない生き残った人間同士も殺しあう。食料(=人間)がなくなってしまったことによる餓死、という感染者たちの末路。
それなのに、わたしはなぜかとても清々しい気分で映画を観終えることができました。それは、ラストにもう一度出てくる“HELLO”の言葉と、ジムたち3人の、ホラー映画の登場人物たちには全くふさわしくないんじゃない?という表情のせい。なんだかすごく不思議な作品です。怖かったけど、観て良かった。

そしてお目当てのC.マーフィー、この映画でもやっぱり素敵でした。次の映画が楽しみです。でもできればあんまり怖いのには出ないで欲しいな~。

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2006年5月22日 (月)

ナイロビの蜂

土・日と映画館は「ダヴィンチ」フィーバーでございました。その余波で忙しかった前日の金曜日に、疲れた体で無理矢理「ナイロビの蜂」を観ました。

Theconstantgardener_0507_2_2 仕事上同じ映画の予告を何度も何度も見なければならないのですが、この「ナイロビ」も相当な回数予告を見ました。

以下ネタばれです。

この映画の予告とキャッチコピー‘地の果てで、やっと君に帰る’を見て、やっぱり最後はこうなるんだろうね、と同僚と話していたとおりのラストでした。疲れに追い討ちをかけられとぼとぼと家路に着いたわたしの目は、真っ赤になっていたと思います。あのラストは主人公のジャスティンにとってこのうえもなく幸せなものだったのだと頭では分かっていたけれど、悲しくて辛くて仕方がなかった。

町山智裕さんのレヴュー:http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20060504
真紅さんのレヴュー:http://thinkingdays.blog42.fc2.com/blog-entry-27.html
本牧LEONさんのレヴュー:http://blog.livedoor.jp/upalley2005/archives/50656788.html

映画の冒頭多分5分も経たないうちにテッサ(レイチェルワイズ)は死んでしまう。夫のジャスティン(レイフファインズ)はそれを受け入れられず、しかも妻には自分に告げていなかった秘密があったことを知る。その秘密を探る陰謀の物語なので、もう最初からただならぬ緊迫感と不穏な空気が漂います(そのせいでどっと疲れる)。そのいやーな雰囲気はずっと継続していくのですが、でもその中からテッサからジャスティンへの、そしてジャスティンからテッサへの愛がぼわーっと浮かび上がってくるような、そんな映画でした。あんまりうまく説明できてないけど(うまく説明できたためしがない。がーん)。

真紅さんが書かれているように、テッサの愛情はなんだか最初はよくわからない気がしました。ふたりは知り合ったその日にベッドインしてしまいます。いきおい?それにナイロビに行ったのは夫婦になってからだと思い込んでいたので、テッサからジャスティンにプロポーズ(!)するシーンを観たときは、‘この人ナイロビに行きたいがために結婚するのか???’とまで思ってしまった。でも違ってたのです。ジャスティンの“CONSTANT GARDENER”なところを愛し(そこに苛立ったこともたくさんあったでしょうが)、ジャスティンがずっと“CONSTANT GARDENER”でいられるように、テッサは彼に何も話さなかったのだ、と今は思います。しかしジャスティンはその自分を変えることになる。テッサを愛してたから。テッサの愛に気付いたから(ひー、愛・愛って何度も書いて恥ずかしいー、ぎゃー)。
テッサが生きていた頃、40キロの道のりを歩いて帰っていく親子を車に乗せて欲しい、とジャスティンに頼んだことがありましたが、そのとき彼は、一人一人にそんなことをしていたらきりがない、そういう人はたくさんいるんだから、というような言い訳をしてテッサの頼みを断りました。そしてラスト近く、一人の子供すらも救えなかったことによって、ジャスティンはあのときの妻の絶望感、無力感を心から理解することになります。遅いよ、ジャスティン。
でも最後には、ジャスティンもやっとテッサの愛に追いつきました。ジャスティンの選択がテッサの望んだものでないのは確かだけど、きっと嬉しくもあったでしょう。天国で「あなたがここまでできるなんて思わなかったわ!」なんて言ってるかもしれません。

ここまで書いてきてなんだかBBMを思い出しました・・・。ジャックの本当の気持ちに気付けなかったイニス。失くしてから初めて分かった深い深い愛。ジャスティンとちょっと似ているような気がする、と言うのはあまりにもこじつけ?テッサがジャスティンに“I feel safe with you.”といっている場面でもこれはジャックだ、そしてイニスだ!と思ったのですが・・・。あ、やっぱりこじつけですね。

綺麗な風景(でもそれだけじゃない)、素晴らしい音楽。そしてラスト、レイフファインズが呟く妻の名前。これは絶対映画館で観たほうがいいです。

Theconstantgadener_0508_1 「ナイロビの蜂」
THE CONSTANT GARDENER
(2005 イギリス)

‘地の果てで、やっと君に帰る’

おめでとう、ジャスティン。テッサ、彼をよろしく。

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