映画・さ行

2008年4月 2日 (水)

『Sweet Rain 死神の精度』  ‘sweet rain’は付けなくてよかった

原作は読んだことないけど、とっても楽しみにしてました。

Sweetrain_80326_4 『Sweet Rain 死神の精度』

映画『アヒルと鴨のコインロッカー』は去年の邦画部門の個人的ベスト1・2を争う作品でした。しかも光石研さん・石田卓也くんという大好きな俳優さんたちが師弟関係(やくざでこの言い方はおかしいかな)を演じているということで、ものすごーく期待してたんだけど・・・ちょっと物足りなかったです。
本編を観る前についついある映画評を読んでしまってたのですが、ほんとにその通りでした。

“人生はもっと厳しいものなのではないか。でも今はこういう優しい映画が求められているのかもしれない。”

そもそも、‘Sweet Rain’って付けてあるのが甘ったるくて最初からなんとなくイヤだったんだい。原作はどうなのかな?映画とは別のエピソードもあるようですが。

でも俳優さんたちはよかった(とくに男性陣)。前述のふたりはもちろん、濃い顔好きのわたしだけどちょっと受け付けないなーという金城武が、死神の千葉にとっても似合ってた。この人は酸いも甘いも噛み分けたいい男よりも、どこか浮世離れした感じの役を演じたほうが魅力的なんじゃないでしょうか。W.カーウァイの『天使の涙』のときの、口のきけない青年役を思い出しました。

Sweetrain_80326_3_2
ミュージックを嬉々として聴いてる姿が可愛らしい。
他に可愛い死神といえば、予想外に面白くて上映時間が3時間ぐらいあるのに劇場で2回も観ちゃった『ジョー・ブラックをよろしく』ですね。

なんだかすごく手抜きの感想になっちゃった・・・いや、いつもそうかも?

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2007年5月29日 (火)

『スパイダーマン3』  ダークサイドでも童顔です

予告編がすごく大変そうで、観るたびに「うう~、どうなるんだ~?」と心配してました。

Spiderman3_70520_1_1  『スパイダーマン3』 (2007 米)

あらすじは省いて以下ネタばれ。

実はこのシリーズに格別思い入れがあるわけではないです。どれも1回ずつしか観てないし、細かいところはもう覚えていません。だから前作と今作のオープニングクレジットでそれまでのおさらいをしてくれるのがとってもありがたかったりします(確か2のときは画面が劇画調で、かっこいい!と思った気が)。で、思い入れはないと言いながら‘MARVEL’のロゴが出るところではいつもワクワクしちゃう。
しかし今回は、最初に書いたとおり予告がとても面白そうだったのでけっこう期待していたのですが、観終わったお客さんが「なんか長かったね~」と言っているのが耳に入ってきてちょっと不安に。そして実際観てみるとわたしもやはり長く感じてしまったのでした。

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蜘蛛の巣の上って寝心地いいのでしょうか?ハンモックみたいな感じ?
でもハンモックで寝たことないからわかんないや。

ヒーローの能力を発揮して街の人々を助けまわっているのに一番守りたい人たちの窮状を救うことができないピーターの無力感や、愛する人を失ってしまったドック・オク(でしたっけ?)の悲しみがすごく丁寧に描かれていて好きだった『2』に比べて、今作はそういう物語の部分にちょっと物足りなさを感じました。なんか中途半端な気が。
クレーン事故のエピソードは確かに迫力があってすごかったのですが、あまりいらなかったかもと思ってしまった。もっとも、ここがあったからスパイダーマンは名誉市民賞をもらって、‘あの金髪美人(美人ではない?)とキス’→‘そのためMJとの溝が深くなる’なので、なかったら困るんですけど。見せ場は最後の四つ巴の闘いで充分なんじゃないかなあ、と(しかしCGがすごいのはすごいんだろうけど、目まぐるしすぎて何がなんだかよくわからなかったというアナログなわたしです)。
それにしても、いくらなんでもあのキスはひどい。以前のピーターならそんなことはしなかっただろうし、きっとすぐにMJの気持ちを理解できたでしょうに。でもあの変な黒いのに寄生されたせいでライバルの写真屋さん(?)やハリーにひどいことをしても痛まなかった心がMJの言葉で正気に戻ったのだから、やはり愛の力は偉大です。

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J.フランコがものすごい悪役顔になっててびっくりしました。
綺麗な顔立ちだからよけいに怖さが増すのかしら???
彼の演技力はもちろんだけど、メイクの力ってスゴイ・・・。

現実の生活で、すごくとげとげしい気分になってひどいことを言ったりしたりして後で悔やんだりすることがわたしにはあります。あの黒いのにとりつかれたらどうなるだろう?誰にも気を使わないでやりたいことやってでも後悔とは無縁でいられるなら、その気持ちよさは癖になってしまうかも。わたしはヴェノムよりなのかな・・・。ピーターがやっと引き剥がしてくれた黒いのを追っかけて、わたしも爆死する?そんなのはイヤー。

しかし、シリーズの最初から観てきて今作にたどり着いた人の99%がこう思ったことでしょう。
‘執事!言うの遅いよ!最初っから教えとけよ!’
でもそうは言いながら、ハリーにMJのことを「大事なお客さんなんですか?」「大事なお客さんなんですか?」と何度もしつこく聞く執事さん、よかったです。ああいう遠慮のない、でも愛のある主人と執事の関係っていいなあと思います。
それからピーターのおんぼろアパートの、口の悪い管理人さんも好きだった。あの役者さんは『遠い空の向こうに』で最初にホーマーたちを手助けする炭鉱労働者・バイコフスキーさんを演じていた方で、ああそういえば出てたんだ~と嬉しくなりました。

ワルのピーター=トビーくん、皆さんどう思われたのでしょう?わたしは観ていてちょっと恥ずかしくなってしまいました。やはり元々の路線の彼を見慣れているので・・・。ダンスはけっこう上手かったのかな?
久しぶりに『カラー オブ ハート』を観たくなりました。

Pleasantville_70529_1
10年ほど前の作品みたいなので、トビーくんもさぞ若いことでしょう・・・。
今でも若いですけどね。

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2007年3月17日 (土)

『それでもボクはやってない』  裁きの庭の矛盾

この物語の主人公や、主人公を痴漢と勘違いしてしまった女の子の立場に立たされるということが、誰にでも起こり得るのです。そうなってしまった時、一体どうすればいいんでしょう?わたしにはわかりません・・・。

_70210_1  『それでもボクはやってない』(2007 日)

フリーターの徹平は、満員電車の中で痴漢に間違われてしまう。釈明をする機会も与えられず訳もわからないまま警察に拘留された彼は、母や友人、同じように痴漢の濡れ衣を着せられ有罪判決を受けた男性の助けを借りて、弁護士と共に裁判に挑む。

以下ネタばれ。

監督が‘主人公が有罪になるか無罪になるかが大事なのではない’というようなことをおっしゃっていたのをどこかで読んだ覚えがあるのですが、2時間半近くずっと徹平くんの戦いを見てきた身としてはそりゃあやっぱり無罪になって欲しい、だってやってないんだから無罪になって当たり前でしょ、と思うのも無理はないはず。しかし、考えてみると本当はタイトルに結果が表われていたんですよね。観終わった後はもうガックリでした。
ほんとに痴漢をしたおっさんがいくらかの罰金を払ってすぐに釈放されて、何もしていない無罪の人が何年も何年もお金と時間と労力をかけて裁判という地獄に捕らわれる。理不尽の極み。わたし、理不尽なの嫌いなんだーっっっ!
でも、‘嫌い’で片付けるわけにはいかないのです。

裁判官が途中で変わったことが、徹平にとって運命の分かれ目になってしまいます。このふたりの裁判官が正反対の立場から事件を見ているのが興味深い。
2人目の裁判官(小日向文世)は最初の裁判官(正名僕蔵)と同じような見方は絶対にしないという考えが前提にあるようで、それまで被告側に有利だと思われていた調査結果や証言をことごとく退けてしまいます。この裁判官たちの間に確執があったのかということは描かれませんが(小日向さんが何か含みのある表情で正名さんを眺めている場面はあったけど)、もしそうだったとしてそんなことが判決に影響するようなことがあったりするのだろうかと考えてしまいました。まさかね・・・そんなアホなことは、ないだろうけど。ないと言ってくれ。
でも上に書いたような極端なことはないにしても、このふたりの裁判官は一方は始めから無罪という見方、もう一方は始めから有罪という見方で裁判を進めているようでした。この時点でもう偏ってるじゃないのさ、と思った。そういう目で見るから、同じ証言でも受け取り方が全く違ってしまうんですよね。

_70313_2  加瀬くんをいじめるなー!ぐあーっ!

余計な考えに惑わされることもなくどんな偏った考えにも縛られず全く中立の立場で物事を見るということは、人間という生き物には絶対に不可能。機械にならできるかもしれないけど、だったら機械が裁けばいいのかということになるとそれも違う。今まで書いてきたことと矛盾するかもしれないけど、人が人を裁く時には感情というものもやはりとても大事な要素になると思うのです。本物の判事さんたちはそこのところでどうバランスをとっているのかな。

映画の中で、事件の数に対して裁判官が圧倒的に足りないので処理能力を超えた件数をこなさなければ追いつかないといったせりふがありました。それを聞いて裁判員制度ってやはり必要なんだなあと感じたのですが、この映画を観た今ではこれまで以上にその責任の重さに恐れをなしてしまってます。果たして正しい判断を下せるのだろうか?それももっと重大な刑事事件で、です。無理だ。

加瀬亮さん演じる徹平くん。初めて刑務所(拘置所?)で寝泊りした翌朝、歯を磨きながら抑えきれずに泣いてしまうところや、普段はそうではないのに人に事件の経緯を説明するときだけ語尾上がり気味になってしまうところなどとても真実味がありました。Yahoo!ムービーの単独インタビューを読んで、ますます好きになっちゃった。
そして小日向さん。主人公の無罪への道に立ちふさがる壁。だいたいのイメージとは正反対の、一筋縄ではいかない・いけすかない嫌な奴なんだろうなというのが初めて法廷に出てきたときの表情だけで伝わってきました。さすが。

それにしてもあまりにも納得がいかないこの結末。どうにもこうにもいかんともしがたいモヤモヤを抱えたまま帰ったんですが、数日経ってもやっぱりモヤモヤがくすぶっていたので、爽快感を求めて『十二人の怒れる男』を借りに行っちゃいました。こっちはすっきりするのが約束されてますからね。

十二人の怒れる男 DVD 十二人の怒れる男

販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
発売日:2006/11/24
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最後に言っても仕方のないことをひと言。
徹平よ、何年間かのフリーター生活の後の就職活動で履歴書を忘れんなよ!そして1本遅れたらもう面接に間に合わないなんていうほどぎりぎりの電車に乗るなバカモンがーーーっ!そんな状態じゃなかったら痴漢に間違われることもなかったのにーーーっ!
・・・しかし、わたしが言うまでもなくきっと本人が一番そう思ってるんでしょう、ね。

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2007年3月13日 (火)

『さくらん』  菜の花畑を駆け抜けて

有名な『吉原炎上』をテレビで観たのは、確か小学生のころでした(さすがにこの映画を映画館で観た小学生はほとんどいないでしょう・・・)。子供にはかなり刺激の強い内容だったこと、そして根津甚八がかっこよかったことぐらいしか覚えていません。でも面白かった。
安野モヨコさんの原作は読んでいないし、監督さんのことも知らない。ついでに言うと椎名林檎にも思い入れはありません。極彩色な花魁たちの美しさ、着物や部屋の内装、小道具などはもちろん強烈だったけれど、わたしの目はやっぱりいい男たちに行ってしまうのでした。

_70309_1 『さくらん』 (2006 日)

幼い頃に吉原の遊郭・玉菊屋に連れて来られきよ葉と名づけられた少女は、‘お稲荷さんの桜が咲いたらここを出て行ってやる!”と決意する。成長した彼女は、他の花魁との確執・客との恋や駆け引きを通して店一番の花魁、日暮(ひぐらし)になってゆく。そしてある時、彼女に大名の奥方になるという話が舞い込む。
お稲荷さんの桜は、咲くことをあきらめてしまったのだろうか?

以下完璧ネタばれ。

きよ葉が幼かった頃一番人気だった花魁・粧ひ(菅野美穂)は、きよ葉の才能(?)を早くから見抜き、負けん気の強い彼女を挑発して闘争心を煽ります。
「金魚は川に放たれると三代で鮒になる。美しくいられるのはこのびいどろの中だけ」
粧ひはこう言うけれど、果たしてほんとにそうなんだろうか?最後の最後にお稲荷さんの桜が咲いているのを見て、きよ葉(日暮)は鮒になることを選び玉菊屋を出て行くのです。清次と共に。桜は、日暮と清次の準備が整うまで咲くのを待っていたのかもしれないな、と思いました。ふたりが一緒に出て行けるようになるまで。

この映画でも主人公は人間関係に恵まれています。
いろいろ男性が出てくる中でいちばん光っていたのはやはり安藤政信演じる清次さん。

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ちらしの裏のこの写真、あまりのかっこよさに目を剥いてしまった。着物似合うー。

喧嘩っぱやく一直線なきよ葉。怒鳴られたりせっかんされたりが日常茶飯事なのですが、その彼女を体を張って諌めたり静かにたしなめたり、時には優しい言葉をかけたりしてずっと見守ってきたのが清次さん。きよ葉に対する彼の思いがいつから愛情に変わっていったのかはわからないけど、それを表に出すことは絶対にしない(自分の働いている店の一番人気の花魁なのだからそんな気持ちを出せるわけがないんだけど)。いい男の見本です。

それと、きよ葉の最初の客であり、また最後の客になるご隠居。

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まるで妖怪のような(褒め言葉です)市川左團次さん。なんかかわいい。

ご隠居はきよ葉の膝の上で息を引き取るのですが、亡くなる前にとっても大事な役目を果たします。
「咲かぬ桜など、ありはせんのじゃよ」
そう言って、きよ葉の背中を押すご隠居。彼はこう言うために彼女に会いに来たんだろうな。ただのエロ親父ではないんですねえ。

遊女や娼婦・男娼の物語ってわりとあるけど、大切な人に出会ったり本当の恋を知ったりして、違う人生を生き直そうとする彼らがラストに幸せになったようなものって、あまり記憶にありません。でも時には、こんな風に希望を感じさせる終わり方の話があったっていいじゃんねえ、と思う。
菜の花畑を駆けていったふたりは、どこにでも行けるのです。

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2006年9月 2日 (土)

『スタンドバイミー』  12歳の夏、線路はどこまでも続いていた

8月が終わってしまいましたね・・・。苦手な季節なのにやっぱり去ってゆく時は少し淋しい気がします。なんとなくもの悲しい気分の中、かねてからの計画通り‘夏の終わりの『スタンドバイミー』鑑賞’を実行しました。

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‘R.フェニックス特集’ということで『旅立ちの時』とこの『スタンドバイミー』が2本立てで上映されていた映画館は、当時中学生だったわたしにはちょっと近寄りがたい繁華街(って言葉今でも使うのかしら)のど真ん中にありました。でもわたしは負けなかった!雨の中お気に入りの服を着て、初めてひとりで映画館に行ったのでした。
そういうかなり思い出深い『スタンドバイミー』ですが、しかし初めて観たときは‘そんなにいい映画かなあ’と思った覚えがあります。だってそのときのわたしはティーンエイジまっさかり(?)で、懐かしく切ない思いで振り返りたい過去なんてなかったから。これは‘少年を主人公にした大人のための映画’なんだなあと気が付いたのは、20代になってからでした(←遅いって)。

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4人の中でいうとわたしは場の雰囲気を読めないバーンタイプだな。

第二次大戦に出征したときの後遺症で精神を病み、息子の耳を焼こうとした父親を心から愛しているテディ。
優秀だった兄の死にショックを受け立ち直れない両親から(そして周囲の大人から)、‘見えない子供’として扱われていることに心を痛めているゴーディー。
貧乏なアイリッシュ系の家庭に生まれ、アル中の父親、子供にあまり関心のない母親、不良で有名な兄に囲まれ、問題児と言われている(自分でもそう思っている)クリス。
ドジで臆病な、4人の中では末っ子的存在のバーン。
早く大人になりたいような、このまま子供でいたいような、そんな微妙な時期にいた4人の、夏の終わりの二日間の‘死体探しの旅’。

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以下ネタばれ。

詳しいあらすじは書きませんが、ぐぐっと来てしまうのはやっぱりクリスとゴーディーの結びつきです。今回は、クリスと一緒にいたいがために進学コースには行かないと言い張るゴーディーに、クリスがこう言うところで涙が出そうになりました。

「俺が君の親なら職業コースに進むなんて言わせない
 君には神様のくれた物書きの才能があるんだ 
 粗末にしちゃいけない
 誰かが守ってやらないと
 君の両親ができないなら俺が守る」

こんな大人びたことを言って、同じ歳の友達を諭すクリス。とても12歳の男の子のせりふとは思えません。ゴーディーの親友でありながら、父親であり、兄でもある、彼はそういう役を引き受けることでゴーディー自身に将来を考えさせようとしました。本当はクリスだってそういう風に言ってくれる人を必要としていたのに。まわりの大人はそんなことにはちっとも気付かないのです。そして、大人たちの代わりに彼の望んでいたことを言ってくれたのは、自分が励ましたゴーディーでした。

「一緒に進学コースに進もう」

「何にだってなれるさ」

ゴーディーにこう言ってもらったクリスは進学コースに進んだ後弁護士になり、ゴーディーはクリスの言ったとおり作家になりました。

クリス 「君はいい作家になるよ 
          題材に困ったら俺たちのことを書けばいい」
ゴーディー 「きっとすぐ困るね」

Standbyme_0831_3_3 しかし、ゴーディーが12歳の頃の友達のことについて書いたのはそれから何十年も経ってクリスが殺された後。書くべき物語をたくさん持っていたからなのか、それとも他に理由があったのか。その疑問は小説の出だしを読んで解決しました。

“なににもまして重要だというものごとは、なににもまして口に出して言いにくいものだ。それはまた恥ずかしいことでもある。なぜならば、ことばというものは、ものごとの重要性を減少させてしまうからだ ― ことばはものごとを縮小させてしまい、頭の中で考えているときには無限に思えることでも、いざ口に出してしまうと、実物大の広がりしかなくなってしまう。だが、本当はそれ以上のものだ。そうではないだろうか?”

さて。ゴーディーとクリスのことばかり書いたけど、テディとバーンもいなければこの旅とこの物語は成り立ちません。父親のことを馬鹿にされて怒り狂ってしまい、せっかくの楽しい気分を台無しにしたとみんなに謝るテディ。迫り来る汽車に怯えて泣きながら鉄橋の上を走ったバーン。その後しばらくして彼らとは‘廊下ですれちがうときに挨拶する程度の仲’になってしまったとしても(いや、だからこそ、なのかも)、あの二日間と、あの頃の友達は、ゴーディーにとって特別な思い出なのです。

“12歳の日々を共に過ごしたあんな友達はもうできない もう二度と”

こんな思い出、わたしにあるかなあ。そういう友達、いないなあ。皆さんはどうですか?
はあ、気分はもうすっかり秋です(まだまだ暑い日が続くみたいだけど・・・)。

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2006年6月 7日 (水)

スモーク

SMOKE DVD SMOKE

販売元:ポニーキャニオン
発売日:2002/03/20
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‘1990年、ブルックリン。時間を撮る煙草屋の店主、書けなくなった作家、たくさんの名前を持つ少年・・・・・・いくつもの人生が交錯し、何かが起ころうとしていた。’ 群像劇好きのわたしは、このコピーを見てぬお~っとなったもんでした。
「スモーク」はBBMと同じく、アジア出身の監督によるアメリカを舞台にした名作です。というわけで今回もこじつけBBM。台詞のひとつひとつに、そして台詞と台詞の‘間’にも意味があるような、淡々と、しかししっかりと語られる物語。ちなみにこの映画の中でも、登場人物の一人が思いがけないところで最愛の人に再会するシーンがあります(あえて詳しくは書きませんけども)。

「スモーク」というくらいだからいーっぱい煙草(と煙草の煙)がでてきます(BBMでもふたりはいっつも煙草を吸っていたなあ)。でもこの‘スモーク’というのは、“あやふやで掴めないけれど確かにそこに存在する、とても大切なもの” の象徴。この映画に出てくる人々はその‘大切なもの’に気がつくことができました(イニスは気付いたけどもう遅かった。うう~)。そしてBBMでは登場人物たちの思いは必ずしも相手に伝わらない・つながりができているようで実はつながっていなかった・本当につながろうとした時には相手はもういなかった、のが辛かったのですが、「スモーク」ではみんなしっかり、あるいはゆるりとつながれています。観ていてそこのところにとてもほっとさせられたのでした。

以下ネタばれです。

‘書けなくなった作家’ポールは、‘時間を撮る煙草屋’オーギーのおかげで創作意欲を取り戻す。オーギーはポールのところに居候している‘いくつもの名前を持つ少年’ラシードによって(危ない橋を渡るような)商売を邪魔されるが、かえってそのおかげで昔の恋人とその娘(もしかすると自分の娘かもしれない)を助けることができた。ラシードはポールとオーギーのおせっかい?によって、実の息子だと名乗れないままで雇ってもらっていた父親に真実を告げる。ポールたち、ラシードの父親のサイラス、オーギーの昔の恋人ルビー、それぞれがみんなひとりで背負おうとしていたいろいろな重荷は、誰かのおかげでふわっと煙のように軽くなっていく。

Smoke_0606_1 物語の途中にいくつか挿入される小噺のようなものも素敵です。冒頭の‘煙の重さを量る’というエピソード。それを語るウィリアムハートの台詞の間の絶妙さとも相まって、最初から話に引き込まれてしまいました。そしてなんといってもやはり最後の‘オーギーレンのクリスマスストーリー’。ハーヴェイカイテルの長い、ほんとに長い語りのおかげでその場面が目に浮かぶよう。(もしイニスやジャックのそばにオーギーのような人がいて、「大丈夫だよ、小僧」なんて言いながら肩を叩きでもしてくれたなら、彼らも少し楽になれたのではないかあと妄想してしまうわたしです・・・。)最後、エンドクレジットは、なんだか小さいけれどしっかり灯ったマッチのあかりがまわりを照らしているような、‘珠玉の’という言葉がぴったりの名場面だと思います。
ポールはオーギーの話をうまい嘘だと言う。本当でも、嘘でも、まあどっちでもいいのですが。でもこの話を聞いてポールも観客も心を動かされたことは確か。そういう意味で考えると、やはり本当に起こったことなのではないかと思えてならないわたしです。

俳優陣がこれまた豪華なこの映画。ハーヴェイカイテルの額に刻まれた皺、ウィリアムハートのとても優しい微笑みを観るだけでも価値ありです(ちょっと大げさすぎるかな?)。BBMのあれこれでちょっと疲れた方、ご覧になってみてください。

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