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2007年5月18日 (金)

『ママの遺したラヴソング』  川のほとりで、大好きな人たちと

お色気過多ではないS.ヨハンソンが、とてもよいです。

Bobbylong_70428_1_1 『ママの遺したラヴソング』(2004 米)

幼いときに離れ離れになって以来音信不通だった母・ロレーンが亡くなったという知らせを受けて、パーシーは母が住んでいたニューオーリンズの家へ向かう。そこには見知らぬふたりの男、ボビーとローソンがいた。
自分たちはロレーンの友人で、ここにずっと住んでいた。ロレーンは自分たちにこの家を譲ると言っていたと主張するボビーたち。一緒に暮らしていた恋人と別れてきて行く当てのないパーシーは、仕方なくボビーたちと一緒に住むことにする。最初こそ言い争いが絶えず一触即発のような状態だったが、一緒に暮らすうちにだんだんと‘家族’としてお互いを必要とするようになるパーシーたち。
母が愛し母に愛された人々に囲まれ、彼女のことを少しずつ知っていくパーシーは、やがて母の大きな秘密に辿り着くことになるのだった。

以下ネタばれ。

パーシーのお母さん・ロレーンは歌手であり、また読書家でした。パーシーはお母さんの愛読書である『心は孤独な狩人』を見つけて、一晩で一気に読んでしまいます。
この『心は孤独な狩人』という小説、大学生の時にアメリカ文学史の教科書に載っていて興味をひかれました。読みたいと思いつつもその後忘れてしまって(・・・)、しかしちょうど去年の今頃びあんこさんが記事にされていたのを拝見して思い出し、そしてまた忘れ(・・・・・・)、それから1年経った今またこの映画の中で再会したのでした。これはやっぱり「読みなさい!」と言うことなんでしょうか。でも廃刊になっているみたいだし、それにものすごく滅入りそうだし・・・。だけどやっぱり気になるなあ。

Bobbylong_70428_3
この、部屋の中に差し込む光の感じとパーシーのドレスがとても素敵でした。

彼女たちが暮らすニューオーリンズの町は、かなり寂れてうらぶれた雰囲気。それに夏はものすごく暑くて冬はけっこう寒い(みたい)。しかし、近くを川が流れています。
最初の頃はとてもすさんでとんがっていた、S.ヨハンソン演じるパーシー。その彼女が、ふたりの男たちとの生活の中で本を読み勉強し、だんだん変わっていく様が印象深いです。あの川べり(ミシシッピ川、なのかな)を散歩したり、少し涼しくなった夏の夕方に近所の人たちと家の外で歌ったり語り明かしているのを見ると、その変化も納得。わたしもあの川の土手を散歩したい。

ところで、彼女のパーシーという名前は略称で、本当は‘purslane(パースレーン)’。母親が花の名前を付けたのだそうです。以前書いたように『グリーンフィンガーズ』でも花の名前を持つ女性が出てきますが、やっぱりいいですねえ・・・。

Purslane_70427_3   
これがpurslane(字幕では‘スベリヒユ’となっていました)。
この映画でこういう花があるんだと初めて知ってしばらく経った後、花屋さんで‘ハナスベリヒユ’の苗を見つけたので買ってしまった。
Cimg0362_1 
パースレーンとはちょっと種類がちがうようですが、うちのハナスベリヒユ(ポーチュラカ、というらしい)。あと二種類植えました。

パーシーは、自分のお父さんが誰なのか知りません。そして幼い頃にお母さんに捨てられたという心の傷があります。
ママとの楽しい思い出を望むあまり自分で記憶を作り上げてしまって、本当にあったこととそうでないこととの区別がもうつかないとボビーに自嘲気味に話すパーシーは、とても痛々しい。しかし作り上げたと彼女が思っていたその記憶が実は本物だったのだとわかったときは、ホッとしました。
そしてパーシーのせりふでもうひとつ心に残ったのがこれ。

「わたしだって、小さい時は子供っぽくて可愛らしいことをしていたはずなの。でも、誰もそれを見ていてくれなかったの」

その過去は、もう変えられません。しかしこれからのパーシーを見ていてくれる人はたくさんいるのです。誰かを愛しまた愛されることで彼女もそれに気付き、物語は幸福に終わります。とても優しい、穏やかな映画でした。

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この場面がすごく好きだった。

最後にひとつ。ボビーは元大学の文学部教授で、ローソンはその教え子でした。文学に造詣の深い彼らは、作家や詩人の名言を口にしては誰が言った言葉なのかを当てっこするのですが、その中のひとつにわたしはものすごく反応してしまいました。『ブロークバック マウンテン』の、‘二人の離ればなれの辛い人生にほんの一瞬訪れた、嘘偽りのない、魔法のような幸福な瞬間’ ― この部分のことを言っているようで。

“幸せは、長さの不足を高さで補う”

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