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2007年4月14日 (土)

『グリーンフィンガーズ』  刑務所生まれの花たち 

今日は仕事でまたミスをして、勤務明けに映画を観ようと思っていたのにその気も失せてしまいすごく落ち込んだ気持ちで帰ってきました。でも帰宅して庭を覗いてみると、昨日植えたばかりの苗に花がふたつついていてちょっとだけ気持ちが上向き加減に。花の効能ですねえ・・・。

グリーンフィンガーズ DVD グリーンフィンガーズ

販売元:メディアファクトリー
発売日:2001/10/05
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弟殺しの罪で15年間刑務所暮らしをしているコリンは、模範囚ということで数少ないユニークな開かれた刑務所として有名なエッジフィールド刑務所に移送されることになる。しかし、両親から見放され罪の意識を抱えてずっとひとりで生きてきたコリンは、新しい刑務所での生活にも他の囚人たちにも馴染もうとしない。
クリスマスの夜、同室のファーガスはそんなコリンにプレゼントを渡す。それはニオイスミレの種だった。仕方なく、暗い夜空の下で適当に選んだ場所に適当に穴を掘り種を蒔くコリン。
しかし春が来て、忘れられていたスミレは花を咲かせる。それを見たコリンの中でも何かが芽生えはじめたのだった・・・。

以下ネタばれ。

この作品は実話を元にしてあるそうです(もちろん脚色はしてあるだろうけど)。『ブラス!』から『キンキーブーツ』までの流れを汲む、イギリスのお家芸(?)ど真ん中の映画。
主人公が犯罪者(それも重罪犯)なので素直に共感する気にはなれないという方もいらっしゃるでしょうが、‘植物に接することで生まれ変わる人々の物語’として観たならこれはかなり説得力があると思うんです。

Greenfingers_70412_3 
コワモテだけどすんごくにこやかな男たちでございます。楽しそう~。

この前ポピーが初めて咲いたときに記事を書きましたが、あのときはほんとに興奮しちゃいました。自然界の神秘を垣間見たとでもいいましょうか。
何の気なしにパラパラッと蒔いて何も世話をしなかった(その上すっかり忘れてた)スミレが人知れず芽を出し花を咲かせているのをみてコリンは衝撃を受けていたけど、その気持ちすごーくよくわかる。ちょっとカルチャーショックでしたもんわたしにも。

『ぱすてると~ん通信』という漫画にこんなせりふがあります。

‘植物って水やったりするとそのぶんきちんとのびてくるんだ
 葉っぱ出したり実つけたり花咲かせたり
  してもらった分だけきちんとのびる
 だれが世話しても ― ぼくみたいな子供がしても’

これはまさにこの頃のわたしが感じていることなんです。ポピーはほんとに毎日伸びて蕾もどんどん大きくなっているし、デイジーは日が照りだすとすぼめていた花を大きく開かせるし。水をやってただ観察してるのがなんだか申し訳ない。頑張ってる彼らの成長を見逃したくないので(子供持ったらこんな気持ちになるのだろうか?)、出勤前と帰宅した時には必ず庭を見回るくせがついちゃったくらいです。
そして映画の中でも、エリザベス女王のこんな言葉が紹介されていました。

‘植物は人を選ばない’

ほんとにそうなんだよなあ。よっぽど悪い条件の下でないかぎりは、必ず応えてくれるんです。子供でもお年寄りでも、元気な人でも落ち込んでる人でも、必ず。そして囚人でも、それは同じこと。

Greenfingers_70412_2
ガーデニング界のリーダー? ミセス ウッドハウスは派手な帽子がお好きなご様子。

この物語の主人公・コリンは、自分が知らなかっただけで実は‘green fingers’の持ち主でした。green fingers というのは 、辞書によると‘植物を育てる才能’。全く興味がなかったガーデニングの世界に足を踏み入れ植物と共に生活するうちに、彼はみるみる頭角を現します。そして、それまで死んだように(‘誰かが自分を殺してくれないかと思いながら’)生きてきたコリンの人生と考え方も、大きく変わる。やるべき仕事と愛する人、仲間に出会うのです。
コリンが言うには、植物と接していると、怒りや憎しみといった感情が消えていく。
そう、そうなんだよ~コリン。花を前にすると、きっと人は誰でも穏やかになれるんだ。

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フン!仲良く庭の手入れかよ!フンだフンだ!と言いつつ、うらやましいのだった。

コリンたちエッジフィールド刑務所の庭師集団はハンプトンコートのフラワーショーに出品するチャンスを得ますが、そこは映画なのでいろいろ山あり谷ありですんなりとは行きません。でも最終的には自分たちの思い描いた通りの庭を作り出し、なんと女王に謁見を許されることになるという。女王のところへずんずん向かう彼らの足取りの、誇らしそうなことよ。
それからも、彼らの後を引き継いだ囚人たちの庭師チームは全国各地のフラワーショーに出品し、最高賞を獲得したりもしたそうです。ううむ、ほんとに映画みたいですね。

筋としてはちょっと大味というか、コリンが才能を開花させていく過程をもう少し丁寧に描いてほしかったなあという気もするんだけど、とても好きな映画でした。
フラワーショーへの出品が決まったあと、刑務所の中のジムで体を鍛えながら「どんな庭園にする?」とみんなで案を出し合う彼らの、少年のようにキラキラした表情。コリンを愛し受け入れてくれた女性の名前が‘primrose’(サクラソウ)なのも可愛いし、何より彼らの庭園がまたステキでした(映画が公開された当初に観たときはあまりそうも思わなかったんだけど。歳とって感じ方が変わったんだろうな)。
‘見逃しがちな美’というテーマの、一見雑草が生い茂っているだけに見えるその庭。確かA.リー監督がどこかで「西洋のガーデニングは自然を思い通りにデザインしようとしているけど、東洋の庭はそうではない」とかいうことをおっしゃっていましたが、そういう見方でいくとこのコリンたちの庭はとても東洋的なのかも。草ぼうぼう加減がうちの庭に似てるのもポイント高いし(なんじゃそれ)、しかもじょうろで水をやっているファーガスがお出迎えしてくれるんだもんね。

Greenfingers_70412_4 こんな感じで水をやっとりますぞい。

この映画を初めて観たときもハンプトンコートのフラワーショー(←これは02年の模様)に行ってみたいなあと思ったんですが、園芸をちょこっと、ほんのちょこーっとかじりだした今、また行ってみたいという思いがふつふつ湧きあがってきております。しかしすぐには無理なので、もうちょっとしたら地元の海浜公園に行く予定です。ミニ庭園がたくさんつくってあるらしいので。楽しみだなあ。

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コメント

Green Fingers をお持ちのかいろさん★こんにちは。
めずらしい映画のご紹介ありがとうございます。他の方からのコメントがないようなのでお邪魔しました。
green fingers という言葉、ブログを拝見して私も辞書を引いてみました。中学時代から愛用している、英和辞典ではいちばんポピュラーな(というか初歩的な)研究社英和辞典にもちゃんと載っていました。本当にあるんですね、こういう言葉(【green fingers】=園芸の才能・腕前)が。今から17年ほど前の大和和紀さんの少女漫画『眠らない街からシリーズ~11月の扉を開けて~』という作品に“緑の手”という言葉がでてきます。都会の真ん中で植物をたくさん育てている10歳の少女とその父親が主人公の漫画なのですが、少女の祖母が少女に「あなたは緑の手を持っている。木や花を上手に育てる人。枯れたものを生き返らせる人、それが生まれつきの“緑の手”の持ち主ですよ」と言う台詞があります。私は今まで大和和紀さんの造語かと思っておりました。
映画に登場するニオイスミレはニオイタチツボスミレでしょうか。地味な小さい花ですから、日本ではこの花に鼻を近づける人はめったにいないかもしれません★
かいろさんも、今までご自身に自覚がなかったgreen fingersの才能にやっと気づかれたのですね。

投稿: メグ | 2007年4月15日 (日) 22時02分

カイロさん、メグさん、こんにちは。

この映画未見です、ぜひ見たいです。
春はイギリスの園芸フェステイバルも盛んですよね。

先日「ターシャの庭」という本を、相方から誕生日プレゼントにもらいました。時々テレビでも紹介されています。

ウチの相方はまさにGreen finger です。ボクはというと、弟子みたいに、あれこれ指図されて、庭仕事しています。
先日種をまいたポピーは、まだ葉っぱのままで、つぼみはありません。
そして、プランターにいつのまにか昨年の球根から芽が出て、赤いチューリップが咲いてました。
ほったらかしなのに、咲いてくれる花には感謝です。

投稿: つぎっち | 2007年4月16日 (月) 08時19分

かいろさん、お久しぶりです。

この映画かなり前にレンタルで観ました。
ガーデニング界のリーダーはあの「クィーン」のヘレン・ミレンですか?

私スミレの花好きなんです。 パンジーとかじゃなくて山で咲いてる可憐なほうが好きですね。

「パフューム」は風邪をひいて観にいけませんでした… 上映期間が短かったんです。風邪が治ったと思ったら終わってました。 残念…
DVDで観ます。

投稿: AYA | 2007年4月16日 (月) 21時35分

メグさん、つぎっちさん、こんにちは!コメントありがとうございます!まとめてお返事させてください。

・メグさん
あまり知られていないようなんですけどこの作品、立派な王道イギリス映画なんですよ~。よろしければレンタルされてみてください☆ けっこうな豪華キャストです。
わたしは園芸に片足をつっこんだ?ばかりで、全然green fingersではないんです・・・。海のものとも山のものともわからないっていうあれでしょうか(←意味不明)。でも、通勤途中にたくさんの花が綺麗に咲いているお宅が何軒かあって、前を通りかかるたびに「ここの人はグリーンフィンガーズなんだわ、ステキ♪」と憧れの眼差しを向けてしまいます。わたしにもあればいいなあ、グリーンフィンガーズ。きっとメグさんはお持ちなんですよね!わたしも頑張りますね!
大和和紀さんの漫画は存じませんでしたが、読んでみたいです。で、ニオイスミレは、映画の中ではviora(viola?)という単語になってました。紫の、葉っぱと茎がけっこうぐるぐるしているやつでしたけど、いかがでしょうか?
それではこの辺で。ありがとうございました!
p.s.
すみれといえば岩崎宏美さんの『すみれ色の涙』を思い出してしまうかいろでございます~♪


・つぎっちさん
映画、ご覧になってくださいませ園芸に興味のある方には、オススメです♪!(ネタばれさせてしまってますけど・・・)
それにしてもイギリスの園芸フェスティバル・・・うううう~、行ってみたいです~。もし行けたら、買ったばかりのデジカメで充電が切れるほど写真を撮りまくることでございましょう☆ つぎっちさんは行かれたことがおありなのでしょうか?
ターシャ・テューダーさんのことは、NHKの特集で知りました。まさにイギリス!といった感じの家や庭が素敵でしたが、その頃は園芸に興味がなかったのであまり熱心に見ることはしなかったような・・・あーもったいない。
しかし相方さんがそんな本をプレゼントしてくださるとは~!いいなあいいなあつぎっちさん!!!しかもgreen fingersな方なんて、もう羨ましいをとおりこして恨めしいです(←怖いって)。わたしも相方さんに指図されて庭仕事したいなー☆
ポピー、勤務先の近くの公園ではまだまだこれからたくさん咲きそうです。つぎっちさんたしのポピーも、きっと準備を頑張ってる途中なんですね♪ 咲いたらお教えくださーい(前にも書きましたね、確か)。そしてチューリップ、おめでとうございます!ほんと、感謝したくなってしまいます。うちのチューリップたちはもうほとんど終わりかけですが、来年また出会うのを既に楽しみにしてたりして。気が早いでしょうか?
それではこの辺で。ありがとうございました!

投稿: かいろ | 2007年4月16日 (月) 21時36分

AYAさん、こんにちは!コメントありがとうございます!
そうです、ヘレン・ミレンです☆ 記事中に書いたエリザベス女王のことばは彼女が映画の中で皆に言っていたことなのですが、この何年後かに自分がエリザベス女王を演じてしかもオスカーを獲るなんて考えてなかっただろうなーなどと、映画に全く関係ないところでも感慨に耽ってしまいました。
パンジーはとてもポピュラーで今頃の季節はどこのお宅にもありますけど、考えてみるとわたしはスミレの花をちゃんと見たことがなかったんです。今回この映画を観直して、ああこういう花だったのかあと思いました。なんだか控えめで、わたしもパンジーより好きかもです。苗が欲しい・・・(←また始まったよ~植えてみたい病が)。
『パフューム』ご覧になれなかったのですか、残念です。楽しみにしてたのに体調を崩しちゃうと、もうがっかりですよね・・・。わたしも何度か経験あります~。でも是非DVDをお待ちください!観て損はしません!た、たぶん(←ちょっと弱気)。
それではこの辺で。ありがとうございました!

投稿: かいろ | 2007年4月16日 (月) 22時04分

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