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2007年3月13日 (火)

『さくらん』  菜の花畑を駆け抜けて

有名な『吉原炎上』をテレビで観たのは、確か小学生のころでした(さすがにこの映画を映画館で観た小学生はほとんどいないでしょう・・・)。子供にはかなり刺激の強い内容だったこと、そして根津甚八がかっこよかったことぐらいしか覚えていません。でも面白かった。
安野モヨコさんの原作は読んでいないし、監督さんのことも知らない。ついでに言うと椎名林檎にも思い入れはありません。極彩色な花魁たちの美しさ、着物や部屋の内装、小道具などはもちろん強烈だったけれど、わたしの目はやっぱりいい男たちに行ってしまうのでした。

_70309_1 『さくらん』 (2006 日)

幼い頃に吉原の遊郭・玉菊屋に連れて来られきよ葉と名づけられた少女は、‘お稲荷さんの桜が咲いたらここを出て行ってやる!”と決意する。成長した彼女は、他の花魁との確執・客との恋や駆け引きを通して店一番の花魁、日暮(ひぐらし)になってゆく。そしてある時、彼女に大名の奥方になるという話が舞い込む。
お稲荷さんの桜は、咲くことをあきらめてしまったのだろうか?

以下完璧ネタばれ。

きよ葉が幼かった頃一番人気だった花魁・粧ひ(菅野美穂)は、きよ葉の才能(?)を早くから見抜き、負けん気の強い彼女を挑発して闘争心を煽ります。
「金魚は川に放たれると三代で鮒になる。美しくいられるのはこのびいどろの中だけ」
粧ひはこう言うけれど、果たしてほんとにそうなんだろうか?最後の最後にお稲荷さんの桜が咲いているのを見て、きよ葉(日暮)は鮒になることを選び玉菊屋を出て行くのです。清次と共に。桜は、日暮と清次の準備が整うまで咲くのを待っていたのかもしれないな、と思いました。ふたりが一緒に出て行けるようになるまで。

この映画でも主人公は人間関係に恵まれています。
いろいろ男性が出てくる中でいちばん光っていたのはやはり安藤政信演じる清次さん。

_70313_1
ちらしの裏のこの写真、あまりのかっこよさに目を剥いてしまった。着物似合うー。

喧嘩っぱやく一直線なきよ葉。怒鳴られたりせっかんされたりが日常茶飯事なのですが、その彼女を体を張って諌めたり静かにたしなめたり、時には優しい言葉をかけたりしてずっと見守ってきたのが清次さん。きよ葉に対する彼の思いがいつから愛情に変わっていったのかはわからないけど、それを表に出すことは絶対にしない(自分の働いている店の一番人気の花魁なのだからそんな気持ちを出せるわけがないんだけど)。いい男の見本です。

それと、きよ葉の最初の客であり、また最後の客になるご隠居。

_70309_3
まるで妖怪のような(褒め言葉です)市川左團次さん。なんかかわいい。

ご隠居はきよ葉の膝の上で息を引き取るのですが、亡くなる前にとっても大事な役目を果たします。
「咲かぬ桜など、ありはせんのじゃよ」
そう言って、きよ葉の背中を押すご隠居。彼はこう言うために彼女に会いに来たんだろうな。ただのエロ親父ではないんですねえ。

遊女や娼婦・男娼の物語ってわりとあるけど、大切な人に出会ったり本当の恋を知ったりして、違う人生を生き直そうとする彼らがラストに幸せになったようなものって、あまり記憶にありません。でも時には、こんな風に希望を感じさせる終わり方の話があったっていいじゃんねえ、と思う。
菜の花畑を駆けていったふたりは、どこにでも行けるのです。

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コメント

娼婦の純情を描いた『海は見ていた』(02年)がそういうラストでした。
この映画の原作である山本周五郎の『つゆのひぬま』が大好きな短編小説だったので当時見に行きました。新しい人生を始めようとする不幸続きだった若い男女。そのふたりが漕いでゆく小舟を安心して見送ったあと、ひとり残った菊乃姉さん(清水美砂)が星空を見上げて「ひとりぼっちでござんすねぇ」と微笑むラストに泣きました。この映画の評判は決してよくなかったのですが(なぜだろう?と今も不思議)、ラストに希望が見えるこういう作品に出会って自分が救われることがあります。
これも「映画のちから」ですね。

投稿: | 2007年3月13日 (火) 20時23分

?さん、こんにちは!コメントありがとうございます!
『海は見ていた』うちの映画館でも上映されてました。清水美沙さん好きなんですが、時間が合わなかったか何かで結局見逃してしまいましたけど・・・。そういうお話だったんですね。
たしか黒沢明監督の脚本だったと記憶しております。あまり評判良くないのですか???今度レンタルビデオ屋さんで探してみます。
それではこの辺で。ありがとうございました!

投稿: かいろ | 2007年3月15日 (木) 11時40分

こんばんは。
ラストの桜&菜の花畑のショットはステキでしたよねー。
解放感いっぱいでした。
そうそう、安藤クンはカッコよかったです。でも、観ている時は彼だと認識しなかったんですよね・・・。BOYのイメージが強かった彼がいつの間にかこんなに包容力のある落ち着いたいい男になっていたとはー。

投稿: かえる | 2007年3月18日 (日) 10時42分

かえるさん、こんにちは!TB&コメントありがとうございます!
この映画を観たせいで、ちょっと菜の花に思い入れができてしまいました。菜の花畑を駆け抜けてみたい・・・というのが今のわたしのささやかな願いです。安藤くんが一緒なら言うことはないけどそれは叶うはずもなく~。
今までそんなに好きではなかったのですが、『46億年の恋』でもすごくかっこよかったです♪ 出演作かなり多いみたいなので安藤くん祭りは開催しないけど、『キッズ リターン』を観直したくなりました。
それではこの辺で。ありがとうございました!

投稿: かいろ | 2007年3月18日 (日) 14時54分

かいろさん、こんばんは☆
TB&コメントありがとうございました。
私にとってこの映画は安藤くんの素敵さにつきますー。
寡黙でいざという時に見守っていてくれる・・・おいしい役でしたよね♪
他の役では「この扱いでいいのか?」と思う方も多々いましたが(笑)
どこへ行くにも、一人ではなくて・・・というのが、希望がある終わり方でしたね。私も菜の花畑へ行きたーい。

投稿: sally | 2007年3月20日 (火) 23時36分

sallyさん、こんにちは!TB&コメントありがとうございます!
やっぱりそうですよね~☆ 安藤くんにつきますよね~。イヒヒヒヒ。本当においしい役でした。
他の方のところにも書き込ませていただいたんですが、安藤くんが場をかっさらって行ったのに対し、遠藤憲一さんは「なんじゃこの役ヒドすぎるー」と悲しくなってしまうほどでございました。でもああいう遠藤さんも好きなんですけど♪
菜の花畑・・・憧れますね・・・。sallyさん、ご一緒にどうでしょう?なんつって。
それではこの辺で。ありがとうございました!

投稿: かいろ | 2007年3月21日 (水) 22時09分

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8歳の時に、吉原の玉菊屋に売られてきた少女は、きよ葉と名付けられ、花魁、粧ひに面倒を見られるようになります。脱走を図るなど問題児だったきよ葉ですが、やがて、吉原一の花魁を目指すようになります。17歳になり、遊女としてデビューしたきよ葉は、注目を集める存在となりま... [続きを読む]

受信: 2007年3月17日 (土) 00時21分

» 『さくらん』 [かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY ]
ビューティフルでありんす。 幼少の頃に吉原の遊郭、玉菊屋へ売られたきよ葉は、やがてトップの花魁になる。72年生まれの女性フォトグラファーが江戸時代の遊郭の花魁を映画にした。 その要素だけで期待は膨らむ。私が普段、時代劇というものに惹かれないのは、多くの主人公はサムライだからなのかな。活気ある江戸の町の文化には惹かれるもの。そして、鮮やかな着物を身にまとった艶やかな女たちの世界には大きな興味を抱いてしまう。それも、オジサンの目線で理想化した女の虚像ではなくて、現代的なセンスをもった女性アーティ... [続きを読む]

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