『ドリームガールズ』 離れては呼び合う魂たち
母が珍しく興味を示した洋画『ドリームガールズ』。うちの映画館で一緒に観る約束をしたのですが、実は裏切って先にひとりで観てしまいました~。ごめんなさい、ちゃんともう一回観るから許してください。
以前観た『シカゴ』や『プロデューサーズ』はあまり合わなかったので、ちょっと不安だったのだけども・・・(←『プロデューサーズ』に至ってはミュージカルシーンの真っ只中で睡魔に負けてしまった不粋な人です)。
こういう映画を観ていつも思うのは、歌の上手い人って自分の体が楽器そのものなんだなあということ。ショウビズ界で生きていくのは生易しいことではないというのはわかってるんだけど、どちらかと言うと音痴で音域も極端に狭い身としてはやっぱり憧れてしまいます。あんなに声を出せたら、気持ちいいに決まってますもんね。
あらすじは省いて以下ネタばれ。
ずーっと前にビデオで『ザ コミットメンツ』という映画を観ました(←主役?のバンドの発起人?がかっこいいんですー☆・・・って、こういう感想ばっか・・・)。全くの他人同士がバンドを結成し、成功し、次第にすれ違い離れていくさまを描いた作品で、なんとなく思い出してしまいました。
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↑なんと¥1,000で買えるらしい。DVDの価格ってほんと謎だ。
『コミットメンツ』の方は、寄せ集め(というと表現が悪いけど)のメンバーだったため最初から人間関係は不穏だったようですが。『ドリーム~』の方は・・・ずっと3人で一緒にやってきたのに、ずっと3人でやってきたからこそ、溝が深くなってしまう。エフィ対その他になって歌でお互いを責める場面は、容赦のない本音の応酬に目を背けたくなりました。もういたたまれなかった。
そしてその後のエフィの独唱。最初は恋人のカーティスに向けての「愛して欲しい」「そばにいて欲しい」という歌だったのが、最後はそれだけではなくなっているように感じました。あれは、仲間たち全員への思いだった気がする。声を限りに歌う彼女。なのに、エフィの周りにはもう誰もいない。
それからずっと、エフィは彼らと本当に縁を切って暮らしていたんですね。彼女の娘がC.Cを見て「この人誰?」と尋ねる場面では、そこまで完璧に断絶してたんだ・・・と愕然。
しかし、そのほかの“FAMILY”の一員たちの絆もそんなに強固ではなかったわけで、それがまた皮肉です。
エンドクレジットでこの場面がもう一度出てきたとき、
‘ここから物語は始まったんだなあ・・・’としんみりしてしまいました。
ジミーがあんな風に死んでいったのは、ローレルにも見捨てられてしまった(と彼は感じた)からなのではないかと思います。反対に、ひとりで生きてやる!と決意したエフィがなんとかやって来れたのは、娘の存在があったからということが大きいのではないかな。全くの孤独だったら、彼女はジミーのようになっていたかもしれません。
娘という支えを得て、でもひとりで生きてきたエフィと、カーティスとずっと暮らしてきて彼の子供を望みながら、結局叶わなかったディーナの再会の場面。ふたりはお互いを見てどう感じたのでしょうか。ここもまた皮肉でした。
やがて、離れていた仲間たちは音楽の引力(この使い方おかしいかもしれないけど)ともいうべき力によって、またつながりを取り戻します。でも、絶対にやるべきではないことをしてしまったカーティスは、“売れる音楽”についてはよく知っていたのかもしれないけど、やはり“音楽家”ではなかった。だから音楽の引力は彼には及ばなかった。ひとりになった彼は、これからどうするのでしょうか(まあ隣にまた美女はいましたけどね)。しかしこの男がなぜこんなにモテるのだろうか???解せんー。
さて、個人的にわたしが惹かれたのはジミーの初期のマネージャーを演じたD.グローヴァー。そして、エフィの復帰の第一歩となったクラブ?のオーナーです。
出てきたとたんに「どっかで見たことある!どっかで見たことある!」と思って、ちょっとの間だけ映画の内容そっちのけで考えてたんだけど、すぐに思い出しました。『トーチソング』で主役のアーノルドの親友、マレーを演じてた方だったんです。だいぶんお歳を召してますが、あんまり変わってない!とっても嬉しい発見でした。
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コメント
「冷たい仕打ちに傷ついたエフィーが怒りと悲しみを込めて歌う『AND I AM TELLING YOU』。
パワフルな歌声は聴く者の胸を締め付ける。
この1曲を聴くだけで、映画のチケット代を払う価値はある。」
某雑誌に載った「ドリームガールズ」の映画評です。これぞ今、まさに今、映画館で見るべき映画。今度はどうぞお母さまをつれていってさしあげて。
「離れては呼び合う魂たち」って、ぴったりのすてきな言葉ですね。
投稿: | 2007年3月16日 (金) 22時15分
?さん、こんにちは!コメントありがとうございます!
はい、エフィのあの歌は聴いていて知らず知らずのうちに涙が出てきました。ほんとに胸を締め付けられました。
予告編でいちばんフィーチャーされていたのがこの歌だったので、てっきり主役のビヨンセが歌ってるんだろうと思ってたのですが・・・。やっぱりJ.ハドソンただ者ではないですねえええ。母を連れてまた観ますー。
そして、副題をお褒めいただき嬉しいです☆ でも、ちょっと、大いに、クサくないでしょうか・・・?ハズカシ~。
それではこの辺で。ありがとうございました!
投稿: かいろ | 2007年3月16日 (金) 23時16分
かいろさま、こんにちは。拙記事にコメントとTBをありがとうございました。
私からもTBさせて下さいね。
あのおじさんが、『トーチソング』の彼(彼女?)だとは・・。
全く気付きませんでした!
確かに、女の友情に「子ども」という取り扱い注意事項が加わると、かなり厄介なことが多いです。
子どもがいたからエフィが強く生きられた、本当にその通りかもしれないですね。
それから今気付いたのですが、「お気に入り」に『素晴らしき哉、人生!』が!
私も昨年末、DVDを買ったんですよ。感想もアップしました。
いい映画ですよね。なかなか古い映画を観る余裕がないのですが・・。
ではでは!
投稿: 真紅 | 2007年3月17日 (土) 00時04分
真紅さん、こんにちは!コメント&TBありがとうございます!
真紅さんの記事を拝見してからキャンディーズの歌が頭の中でまわり続けておりますです~。ううう。
エフィ、娘にステージ上のお母さんを見せることができてよかったねえ・・・とわたしがホッとしてしまいました。
そして、そうなんです!『トーチソング』の彼女だったんですよお。思い出したときには雄叫びをあげそうになりました。
そしてそして、『素晴らしき哉、人生!』の感想をお書きになっていたとは!!!早速伺わせていただきます☆
それではこの辺で。しかしなんつうとりとめのないお返事なんだろう・・・。
投稿: かいろ | 2007年3月17日 (土) 19時47分
こんにちは。
お邪魔するのが遅くなってごめんなさい。
もう、あちこち失礼ばかりで申し訳ないです。
かいろさんも『プロデューサーズ』、ダメでした?
わたし、ミュージカルは好きなんですけどね、
あれは、全く何ひとつ楽しめず、何がいいんだかさっぱりわからないのですよ。
あんなに会場を早く出たかった作品は珍しい…
って、そんなところに反応してどうするんだ自分(笑)
かいろさんが仰るように、
エフィが貧しいながらも何年も頑張れたのは
ひとえに娘の存在があったからこそだと思います。
『幸せのちから』でもそうだけれど、
ギリギリの生活で、いつグレても(?)おかしくない状況でも
最後のところで踏ん張れるのは、
何物にも変え難い存在が、自分を愛してくれていることなんでしょうね。
投稿: 悠雅 | 2007年3月18日 (日) 08時41分
悠雅さん、こんにちは!TB&コメントありがとうございます!
‘『プロデューサーズ』いまいち仲間’が増えて心強いです♪ M.ブロデリックは好きなんですけど、なぜか合いませんでした・・・。なんでだろう???
『幸せのちから』はどの程度脚色されたのかはわからないけど、あのお父さんがわたしだったらグレますね、完璧に。もうどうでもいい!と投げ出してしまいそうです。
エフィもとってもよいお母さんというわけではなかっただろうけど、ラストのステージの上の母親を見る娘の表情からすると、やはりちゃんと愛情を注いでいたんですよね。
誰かのために踏ん張る姿は、大人でも子供でもステキ。エフィの娘はこれからもお母さんを支えていくんだろうな。
それではこの辺で。ありがとうございました!
投稿: かいろ | 2007年3月18日 (日) 14時33分
かいろさま、こんばんは~♪
こちらこそご無沙汰しております。
コメントいただき、ありがとうございました。
すみません、音響のことなんてさっぱりわからないのに・・。私の耳があかんかったのかもしれません。
『プロデューサーズ』は未見なのですが・・・
皆様の評判はちょっと芳しくないようですね^^;
マシュー・ブロデリックは小学生の時、『ウォー・ゲーム』で惚れて、割と長いこと追いかけてました(笑)
話がずれてすみません。
投稿: 武田 | 2007年3月18日 (日) 22時52分
カイロさま、こんにちは!
TB&コメントありがとうございました。
私は最後のコンサートで4人がおじぎをした瞬間に、スタンディングオベーションしたかったんですが、もちろんそんな人は周りにもおらず…誰かやってたら間違いなくのってたと思います(笑)。アメリカの映画館じゃ、やってそうだな~。
私は結構カーティスに同情的なんです(笑)。カーティスが自分を盾にしてみんなをスターに押し上げたんですもの。もちろん、パクリはだめですけど、彼を王様にしちゃったにも周りの人々の責任でもあるかも、と思ってしまいました。
それにしても、映画料金が高くない!と感じたのは久しぶりでした。
投稿: ガラリーナ | 2007年3月19日 (月) 14時43分
武田さん、ガラリーナさん、こんにちは!コメントありがとうございます!まとめてお返事させてください。
・武田さん
すすすすすみません!そういうつもりであのコメントを書き込んだのではないのですうううう。
わたしも自分とこの映画館で‘ちょっと大きくないかい?’などと思うこともしばしばで、やっぱり音楽の映画は難しいなーと自戒の意味を込めて・・・なんて、自分で書いててよくわからなくなってきました。とにかく、映画を適切な音量・音響で観るってことは絶対必要条件(?)なんですよね。頑張らなければ、と心を新たにしたのでした。
M.ブロデリック、わたしも一時期はまっておりましたあ☆
『グローリー』とか『ブルースが聞こえる』とか、今思うとあの頃のわたしはマシュー祭りを開催してたんですねえ~。『プロデューサーズ』でも相変わらずあのお顔で嬉しいようなほろ苦いような複雑な気持ちでした・・・。
それではこの辺で。ありがとうございました!
・ガラリーナさん
いっぱいTBを送らせていただいて、ちょっとやりすぎだったかな・・・と反省しております。申し訳ありませんでした・・・。
そして、スタンディングオベーションやってそうですね~本国の観客は☆ この映画、オープニングからもう全開ですもんね。ワクワクしちゃいます。
で、カーティスは実は皆さん高評価なようなんです。わたしの見る目がないのかもしれません~。そうですきっと(涙)。
ガラリーナさんがお書きになっているように、彼らがあそこまで成功できたのはカーティスのお陰なわけで。エフィを追い出したのも彼ひとりではなくみんなの意志だったんだし、やはりカーティスだけを責めるのはフェアじゃないですよね。反省。
‘映画料金が高くない’と思える作品、これからもどんどん出てくるといいなあ。
それではこの辺で。ありがとうございました!
投稿: かいろ | 2007年3月19日 (月) 23時28分
かいろさん、こんばんは♪
TB&コメントありがとうございました。お返事遅くなってごめんなさい;;
何だかかいろさんのレビュー中で触れられている映画で好きなものが多くて嬉しいです(勝手に・・・)。
『ザ・コミットメンツ』は隠れた音楽映画の名作♪
私、普段聴いてる音楽がロック系ばかりなのでその手の映画には弱いんですが・・・。
それにそれに、『トーチソングトリロジー』はもう大好きなんですが・・・思い出すだけでうるる。
アーノルドの親友が出演していたとは。
かいろさん、よく覚えていらっしゃいますね~☆
投稿: sally | 2007年3月27日 (火) 01時14分
sallyさん、こんにちは!TB&コメントありがとうございます!
好みの映画、sallyさんと似ているのでしょうか???もしそうならわたくしの方こそ嬉しいです♪
『ザ コミットメンツ』は、当時周囲にいた人がことごとく音楽(とくにUK)好きで、その中のひとりに猛烈に勧められて観たのでした。ヴォーカルの人が見た目はイマイチなのに、歌を歌ってるときだけはえらくかっこよくみえたことをよく覚えています。「ムスタング サリー」って歌も好きでしたー。
そしてsallyさん!!!『トーチソング』お好きなのですか!キャ~~~☆ わたしもたぶん人生で一番回数観たかもというぐらいに好きな映画で、自称『トーチソング』のまわしものなんです。知る人ぞ知る名作ですもんね、エヘヘヘヘ~(←不気味な笑み)。
いつかsallyさんとも『トーチソング』のお話ができればいいなあと密かに願いつつ、それではこの辺で。ありがとうございました!
投稿: かいろ | 2007年3月28日 (水) 22時34分