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2006年7月13日 (木)

いつか晴れた日に

Senseandsensibility_07_07_1_3 公開当時(10年前!)にうちの映画館で一度観たきり、‘うん、好きだ’という感想ぐらいしか持っていなかった『いつか晴れた日に』を再見しました。観てみると、10年後のわたしはこの映画をとってもとっても好きになっていました(やっぱりBBM&アンリー効果が大きいだろうけど)。以下ものすごくネタばれ。

J.オースティンがこの映画の原作『分別と多感』を執筆したのは18世紀後半なのだそうですが、時代も生活様式も全く違うこのイギリス人女性たち(そして男性たち)の恋愛模様を描いた物語が、またもやBBMに重なってしまってちょっと不思議(その辺のところはパンフレットやキネ旬にさすがプロ!というしかない分析が載っています)。
小説BBMでイニスは‘知ったこと’と‘信じようとしたこと’に引き裂かれて(ジャックをも巻き添えにして)苦しまなければなりませんでしたが、この『いつか晴れた日に』の登場人物たちは‘分別’と‘多感’に左右されてかなりの遠回りを強いられながらも、最終的には幸せにたどり着くことができました(この大団円は心底嬉しかった。みんな、よかったね)。

父親のダッシュウッド氏が亡くなる場面から始まるこの物語。当時の女性のほとんどは男性の財力に頼って生活しており、主人公のエリノアたち一家の暮らしはいろいろな事情から一気に困窮することになってしまいます。そんな中で姉のエリノア、妹マリアンヌの恋物語が展開していくのですが・・・。

Sesneandsensibility_0707_4_2理想にぴったりのウィロビーと恋に落ち、他のことがほとんど目に入らなくなるほど突っ走ってしまうマリアンヌ。亡くなった父親の代わりに一家を支える責任を感じ、そして何よりもその性格上、エドワードへの恋心を無邪気に表すことはできないエリノア。彼女たちは小さな誤解やすれ違い、思い込みから、なかなか真の愛に気付くことができません。
別の男に恋しているマリアンヌを、彼女が幸せなときもぼろぼろになってしまったときも変わらずにすぐそばでずっと見守っているブランドン大佐。自分は片思いなのだと思い込んでしまう、エリノアに負けず劣らず不器用で奥ゆかしい?性格のエドワード。“I love you.”とも言わず、相手との距離を保ちながら(ベッドシーンはおろかキスシーンすらない。握手もせずにお辞儀するだけ)、なんとか愛を伝えようとする彼ら。
相手から裏切られたり、自分ではどうしようもない事件が起きたりして、‘多感’な若者も、‘多感’を‘分別’で押さえつけようとする大人も、イニスのように‘どうにもできないなら耐えるしかない’とあきらめてしまいそうになる。ほんとに最後の最後までやきもきさせられてしまいますが、でも、だからこそラストの幸せ感が本当に際立っています(←エリノアの涙と笑顔に、同じように泣き笑いしてしまったわたし)。やっぱり“I love you.”とは言わないエドワードの告白も大好き(これってまるでイニスの“I swar....”じゃないのさ!!!と思ってしまった)。

「今やっとあなたに言うことができます いつまでも ぼくの心はあなたのものだと」

Senseandsensibility_0711_1_1

そしてこのお話はラブストーリーであり家族の物語でもあります。お互いが辛いときでも妹(姉)を思いやるエリノアとマリアンヌ。エリノアの恋が成就したのを見て心から喜ぶ家族たち。アンリー映画はやっぱり‘家族’が大きなポイント?
この作品は、彼が初めて母国の外に出て撮った映画なのだそうです。英語に苦労させられたようなことを音声解説で語っていらっしゃいましたが(謙遜か?)、そんな状況下でも、そして10年も前からリー節は顕在なのが興味深い。景色にこだわり、アングルにこだわり、色にこだわり、音楽にこだわり。なかでも景色は本当に綺麗でした。
それにしてもこのDVDの音声解説は本当に面白かった。爆笑してしまう部分もあったし、話を聞いてるとリー氏の物腰柔らかそうだけどかなり辛辣なことをずばっと言ってのけてそうな姿が目に浮かびます。予算は少なかったけどとても楽しい現場だったということでしたが、果たしてBBMの場合はどうだったんだろう?話が話だからなあ・・・。

ラスト、晴れ渡った空の下、ブランドン大佐とマリアンヌの結婚式が執り行われます。それを人知れず丘の上から見つめるひとりの男。貧乏な家の娘マリアンヌを捨てて金目当ての結婚を選んだウィロビーです。エドワード・エリノア夫妻や家族、いろいろな人から祝福されてとても幸せそうなマリアンヌを見届けて、彼女の人生から永遠に姿を消す決心をしたかのごとく馬に乗ってひとり去って行くウィロビー。(観客も含めて)みんながとても幸せ気分に浸っている中でのこの彼のエピソードが、この作品が単なるハッピーエンドのラブストーリーではないことを物語っている気がして、はっとさせられます。やっぱりわたしは悲しいハッピーエンドが好きなようです。

借りてきたDVDを返すのが名残惜しくて、延滞するか?と一瞬思ってしまいました。‘買わなければならないDVDリスト’に早速入れたのは言うまでもありません(でもリスト増えるばっかりで全然買ってないんだけど・・・)。

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映画・あ行」カテゴリの記事

コメント

かいろさん、こんにちは。
「いつか晴れた日に」再見されたのですね。私も大好きな映画です。TBさせていただきましたので、よろしく。3月5日、BBMを見る2日前のものです。
キネ旬の記事と絡めて、やはりBBMのことも書いてますね。
私もかなり気に入ったこの映画。今また見たらさらに深い感銘を受けるような気がします。

ブランドン大佐、よかったですよね。ラストはちょっぴり悲しくもあったけどハッピーエンドで♪
残念ながらリー監督の音声解説は聞かずに返却しちゃいました、もう1度見なければー!

投稿: びあんこ | 2006年7月13日 (木) 18時23分

びあんこさん、TB&コメントありがとうございます!
びあんこさんの書かれた記事、もちろん拝見いたしました!そしてTB送ろう~と思ったのですがやっぱり駄目で、いじけて帰ってきてしまいました・・・。

>今また見たらさらに深い感銘を受けるような気がします。

はい、間違いなしです!ぜひご覧になってください!そして音声解説(2種類あって、2種類とも面白い!)もお聞きのがしなく~。お馴染みのJ.シェイマス氏の声も聞けます(別に聞きたくないよーとか言われてしまったりして・・・)。

この映画を再見してこんなに好きになったということは、他のリー映画も観直さなくてはいけないってことだなあと考えているわたしです。
それにしても本当にブランドン大佐、素敵でした。A.リックマンが演じたおかげでしょうか。でもその他の登場人物たちもみんな好きでした♪
それではこの辺で。ありがとうございました!

投稿: かいろ | 2006年7月13日 (木) 19時12分

かいろさま
いつもTBとコメントありがとうございます。
昨年、全く違う理由で観たこの作品でしたが最近、わたしも観直したところです。
BBMがアン・リー監督と知った時、すぐにこれを思い出して
とても期待しながら公開を待っていたのでした。

どこか自分に共通するところが多いエリノアに思いっきり感情移入してしまい、
終盤は彼女と一緒にわたしはマジで号泣してしまいました。
映画を観て、声上げて泣くなんて、『火垂るの墓』とこれだけです。
『火垂るの墓』は辛すぎるので、もう2度と見ませんが
こちらは、今まで何度も観た(ビデオがあるのです)ように、
これからも何度でも観たくなると思います。

返すのが名残惜しい、そんな作品に出会えて幸せですよね。

投稿: 悠雅 | 2006年7月13日 (木) 23時51分

悠雅さん、こんにちは。TB&コメントありがとうございます!

エリノアのあの最後の涙と笑顔が見られてよかった・・・。きっと映画を観ている人たち全員がそう感じていたと思います。あの時の彼女は本当にチャーミングで素敵でしたよね。『いつか晴れた日に』というタイトルがぴったりのラストで、とても嬉しかったです。

>『火垂るの墓』は辛すぎるので、もう2度と見ませんが
こちらは、今まで何度も観た(ビデオがあるのです)ように、
これからも何度でも観たくなると思います。

わたしもなんです・・・。『火垂るの墓』はしゃくりあげて泣いてしまいました。そしてもう絶対観ないと決めています。でも『いつか晴れた日に』は何度でも観たいです!やっぱり映画っていいなあとつくづく思ってしまいました。
それではこの辺で。ありがとうございました!

投稿: かいろ | 2006年7月14日 (金) 00時18分

かいろさん、こんにちは。
私もコメンタリ聞き逃してます。また観なければ・・・。
エリノアが『分別』でマリアンヌが『多感』というのはよく言われますが、最後の最後にエリノアが感情を爆発させるところでは、ほとんどの人が一緒に涙ぐんでしまうのではないでしょうか。
そしてウィロビー。あそこで彼を登場させるところがまたいいんですよね。ただの悪役にしないところが。
しかしこの作品のケイトは本当に「動くギリシア彫刻」みたいで目が離せませんでした。
同じくオースティン原作の『プライドと偏見』は未見なので見比べてみたいです。
BBMと同時にリリースのアン・リー作品、レンタルに並ぶかな?どれも未見なんで楽しみにしてるのですが。
ではでは、またねです~

投稿: 真紅 | 2006年7月14日 (金) 01時50分

真紅さん、こんにちは。コメントありがとうございます!

>エリノアが『分別』でマリアンヌが『多感』というのはよく言われますが、最後の最後にエリノアが感情を爆発させるところでは、ほとんどの人が一緒に涙ぐんでしまうのではないでしょうか。

はい、そう思います!わたしはかなり涙もろいので当たり前のようにグスグスやってましたが、きっとそうでない人でももらい泣きしてしまうのじゃないかなあ・・・。いつかのわたしのように‘途中寝ちゃったよーん’という場合を除いてですが(かなりトラウマ)。

>そしてウィロビー。あそこで彼を登場させるところがまたいいんですよね。ただの悪役にしないところが。

はい、またもやそう思います!!!音声解説でE.トンプソンがそのことに触れていました。ウィロビーも、‘若さやイノセンスを喪失した人’のひとりですよね・・・。

>しかしこの作品のケイトは本当に「動くギリシア彫刻」みたい

これ、たしかJ.シェイマス氏も音声解説でおっしゃってましたよ~!さすが真紅さん!それにしても当時ケイトは19歳だったとのことで、びっくらこきました・・・。

あ、それと、『プライドと偏見』は一応観たわたしですが、『いつか晴れた日に』を再見した今となってはやっぱり『プライドと~』のほうはちょっと物足りなかったような気がします。真紅さんも是非ご覧になって、感想を教えてくださいませ。それではこの辺で。ありがとうございました!

投稿: かいろ | 2006年7月14日 (金) 19時11分

あらら、すっかりコメントもTBもしたつもりになっておりました!!

この作品は大好きです!!
すでに皆さんがコメントしている通りなのですが、エリノアの嗚咽に堪えていた涙があふれました

どの登場人物も丁寧に描かれていて
ほんとうにいい作品だと思います!!

投稿: D | 2006年7月27日 (木) 19時55分

Dさん、こんにちは!TB送らせていただきました、ありがとうございます!

>エリノアの嗚咽に堪えていた涙があふれました

あのときのエリノア、‘映画泣き笑い部門’があったら(?)絶対に上位に入ってくると思います~。E.トンプソンを可愛いと思う日が来るなんて、思ってもみませんでした・・・。女優さんてすごいですね~。
それではこの辺で。ありがとうございました!

投稿: かいろ | 2006年7月27日 (木) 22時22分

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