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2006年7月31日 (月)

プルートで朝食を

Pluto_0720_3_1映画をよく観るようになってけっこう経つのに、このごろようやく発見したこと(ほんとに遅すぎて自分でもあきれてしまいますが)。何かを心から求めて、あるいは何かを捨てたくて、でも捨てられなくてもがいている・苦闘している(ジェイクくん言うところの‘struggle’ですね)人々を描いた物語のなんと多いことか。だからいろいろな映画にBBMを見つけてしまうんだなあと勝手に納得しているわたしです。
この『プルートで朝食を』の主人公も、その中のひとり(でも彼女は「苦闘?そんな大変そうな言葉好きじゃないわ~」とか言いそうだけど)。かなり、相当、とってもおすすめの映画です。まだ公開中(だと思う)なので、興味がわいた方はネタばれ部分は読まずに映画館へどうぞ!

アイルランドの小さな町で、両親を知らずに育ったパトリック。幼い頃から化粧品やドレスといったものが大好きで女装癖のある彼は、養子先の家族や学校の先生など、周囲の人から変わり者扱いされていました。でも本人はあまり気にせず、空想の聖人‘キトゥン’に自分をなぞらえ、本当のお母さんに再会できることを夢見る毎日を送っています。
しかしある日、悲劇が起こります。それをきっかけに、住み慣れてはいるけれど居心地のよくない故郷を離れ、大都会ロンドンへとお母さんを探す旅にでるパトリック=キトゥン。でも、女装して一見気ままに振舞っているキトゥンを理解しようとしない人はやっぱりいて、彼(いや、彼女か)を傷つけます。そしてアイルランドという国に生まれた以上、彼女も政治的な問題と無関係でいられるわけがなく(その辺の事情は勉強不足でわたしはよく知らないのですが)、キトゥンや周りの人の人生にもそれは影を落としてくるのです。
果たしてキトゥンはお母さんを見つけ出すことができるのでしょうか?そして、彼女を本当に愛してくれる人は、いるのでしょうか?

以下ネタばれ。

Pluto_0720_2 キトゥンの旅は過酷です。愛した人に裏切られたり利用されたり、テロリストに間違われたり殺されかけたり。たくさんの不幸がキトゥンの身に降りかかります。しかし、彼女を助けてくれる人が、いつも必ず現れる(尋問中にキトゥンを散々痛めつけた刑事までもが彼女の心配をするようになるのです)。‘神は、彼にほんの少しの試練を与えた’というキャッチコピーはほんとにそのとおりなのですが、試練を与えるだけ与えておいて後はほったらかし、というわけでもないような気がします。
ときどき空想に逃げ込むことはあるけれど、どんなにひどいことをされてもどんなに悲惨な状況に陥っても、ヒステリックになったり相手に攻撃的になったり反対に自虐的になったりすることもなく、起こったことをただそのまま受け入れていけるキトゥン(なにかにつけ文句たらたらのわたしからすると、彼女はまるで本物の聖人に見える・・・)。そんな彼女だからピンチに陥ったときも誰かが必ず助けてくれたのではないかなあ、と。彼女のお茶目でチャーミングなところはもちろん大好き。でもそれ以上に、こういったキトゥンの人間離れした美徳のようなものにわたしは(そしてきっとキトゥンの周りの人たちも)とても惹かれました。試練を与えると共に、この‘美徳’の種を、神様はちゃんとキトゥンの中に蒔いていてくれた。そして彼女はその種を自分ひとりで立派に育てていったんじゃないかな・・・と、わたしは思います。キトゥン、すごいよ!

しかし。その聖人のような彼女も、愛情と居場所を必死になって探しているひとりの女の子。幼い頃の彼女をよく知る神父は、キトゥンのことを‘よく笑う子供だった’と表現しました。そして彼は、彼女にはそうするしか術がなかったのだということにも気が付いていました。この神父さんが物語の鍵を握っているのですが、ここでは書きません。そしてキトゥンが旅の末に何を失い、何を手に入れたのか、それも書きません。だってもったいないもーん(『松子』の時もおんなじことを書きましたねえ、わたし)。

そして最後に。この映画を観て、‘苦闘する人々’だけではなく、言わなければならないことを言わなければならない時に言えない人々もやっぱりたくさんいるんだなあということも発見しました。前述の神父のせりふ(確かこんなかんじだった);

「簡単なことほどかえって言えないときがあるんだよ」

こんな悩みは神父さんなんかには無縁のものなんだろうと思っていたけど、そっか、おんなじなのか。しかしここで安心してたらいけないのです。手遅れにならないうちにちゃんと言葉にして言わないと(ねー、イニスくん)。とりあえず周りの人に「ありがとう」と言ってみようかな、などとあまり映画の本筋には関係ないことを決意したわたしでした。じゃあまずこの人たちに。監督さん、キリアンマーフィー氏、こんなハッピーな映画を見せてくれて、ありがとう!

Pluto_0720_1 『プルートで朝食を』
BREAKFAST ON PLUTO
(2005 イギリス)

‘神は、彼にほんの少しの試練を与えた’

ほんの少し、というにはちょっとへヴィーすぎる気がしないでもないけど、この勝負(?)キトゥンの勝ち!ワーイ。

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映画・は行」カテゴリの記事

コメント

はじめまして、TBありがとうございました。こちらからも送らせていただきました。
本当に素敵な映画でしたね。「シリアス」から逃げるのではなく、ほんのちょっと向き合う角度を変えてみるだけで、違うものが見えてくるような、そんなものの見方を教えてもらったように感じた作品でした。
キリアン君もとってもキュートでしたね。

投稿: わかば | 2006年7月31日 (月) 21時03分

わかばさん、こんにちは!TB&コメントありがとうございました!
キトゥン流の闘いかたをいろいろな物事に応用できたら、世界はもっとよいものになるような気がします。香水戦法、とってもキュートでしたよね。

>。「シリアス」から逃げるのではなく、ほんのちょっと向き合う角度を変えてみるだけで、違うものが見えてくるような、そんなものの見方を教えてもらったように感じた作品でした。

わかばさん、素敵です!本当にその通りです。またお邪魔させてくださいね。それではこの辺で、ありがとうございました!

投稿: かいろ | 2006年7月31日 (月) 22時29分

初めまして。コメントとトラックバックありがとうございました。
とても魅力的な映画でしたよね。
シビアな現実を軽やかに描くことで、大切な何かを感じさせてくれました。
キリアン・マーフィーには、やられてしまいました。

投稿: いわい | 2006年8月 4日 (金) 00時07分

いわいさん、こんにちは!TB&コメントありがとうございます!
ほんとに軽やかで鮮やかで厳しいけど楽しい映画でした。そしてわたしもC.マーフィーにばっちりやられてしまいました・・・。キトゥンではない時の(他の映画の)彼の声がまた結構低くて素敵でした~。今後が楽しみです。
それではこの辺で。ありがとうございました!

投稿: かいろ | 2006年8月 4日 (金) 01時08分

こんばんわ、かいろさん。
TB&コメントありがとうございました。
私も、かなりの勢いで好きですこの映画。すごくキッチュでラブリーで。映像的にもああいう煌びやかなものが大好きなので、はっきり言って全てがツボ、と言っても過言ではないかもしれません。
ところで「ブロークバック・マウンテン」に対するかいろさんの愛をすごーく感じました。あれも深くていい映画ですよね~。ジェイクくんは今一番気になる若手俳優さんです。

投稿: さばきち | 2006年8月 6日 (日) 20時53分

さばきちさん、こんにちは!TB&コメントありがとうございました!

>私も、かなりの勢いで好きですこの映画。

わたしもです!今年のベストテンに入ります!キトゥンの歌うようなせりふまわしも、キトゥンの改造制服も、ラストの清々しさも、全て好きでした。

>ところで「ブロークバック・マウンテン」に対するかいろさんの愛をすごーく感じました。あれも深くていい映画ですよね~。ジェイクくんは今一番気になる若手俳優さんです。

ああああありがとうございます~、嬉しいです!それにしてもジェイクくん、いいですよねええええ。彼の瞳もC.マーフィーと同じくらい綺麗な水色!うふふ。
それではこの辺で。またお邪魔させてくださいね、ありがとうございました!

投稿: かいろ | 2006年8月 6日 (日) 23時43分

や~っと観ました!!
クリスマスイヴに♪

お話は痛い部分もあったのに、それでもキトゥンに出会えたことが嬉しかった!!
すごく暖かい気持ちになった作品でした♪

投稿: D | 2006年12月25日 (月) 13時27分

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