嫌われ松子の一生
うう~ん、またものすごい映画を観てしまいました。皆さんもご存知だと思いますが、「嫌われ松子の一生」でございます。例によって小説を読まずに映画を観たのですが、小説での‘松子の一生’はどういう描かれ方をしているのでしょうか?気になるけど、読むのがちょっと怖い気もします・・・。
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嫌われ松子の一生 (上) 著者:山田 宗樹 |
東京荒川の河川敷で死体となって発見された、川尻松子(53)。その甥の笙は、九州で暮らしている父親(松子の弟)のかわりに、存在さえ知らなかった叔母・松子の暮らしていたアパートの整理をすることになる。うまくいかないことばかりで自暴自棄に生きていた笙だが、いろいろな人から生前の松子にまつわる話を聞くうちに、その人生に興味を覚えるようになる・・・。
以下ネタばれです。
予告などを見てわたしが勝手に想像していた松子という人は、‘どんなに不幸に見舞われてもそれをものともせず、ターミネーターのごとく起き上がり幸せに向かって邁進するとことん楽天的な女性’ だったのですが、それはちょっと違っていました。確かに松子のまわりにはいつも花や蝶や鳥が舞い踊っているし彼女自身も常に歌っているけれど、決して楽天的なわけではないし、ちゃんと(という言い方はおかしいけれど)ダメージも受けている。「なんで?」と呟き「なんでーっっっ!」と絶叫しながらもそのダメージを乗り越えて次の幸せを見つける松子ですが、‘ゼロからのスタート’ではなくいつも‘マイナスからのスタート’で、しかも誰かに裏切られるたびにそのマイナス度は大きくなっていくので、観ているほうもかなりのエネルギーを必要とされます。
松子の人格や人生に大きな影響を与えたのは父親の存在でした(イのつく人やジャのつく人を思い出しますねえ・・・)。病弱の妹ばかりを可愛がる父親に愛されたくて、‘こうしたらきっとお父さんは気に入ってくれる’という判断基準のもとに生きていた松子でしたが、ある時、自分が妹より愛されることは絶対にないのだと思い知らされます。同じ頃、ちょっとした誤解から大きな問題を引き起こして勤めていた高校をくびになってしまった彼女は、勢い余って家を飛び出しました。いろいろな男に出会っては裏切られる<総天然色の不幸の見本市>な人生の始まりです。
子供の頃に‘おとぎばなしに出てくるお姫様のような人生’に憧れた松子なのに、恋に落ちる男が揃いも揃って‘白馬に乗った王子様’からは外見的にも内面的にも程遠いというのはなんとも皮肉で現実的。実際の生活の中でそんな王子様(あるいはお姫様)のような人なんてそうそういるわけないもん。いや、というより、よく‘好きになった人が理想のタイプ’なんて言いますが、松子の場合は‘好きになった人が白馬に乗った王子様’だったのかもしれません(えらく許容範囲が広い松子ですが、監督によると‘誰でも良かったわけではない’とのこと。うーむ、人の心の摩訶不思議さよ)。
そしてそれ以上に皮肉だったのは、<自分を愛してくれていなかったはずの父親>も、<衝動的に首を絞めかける程の憎しみを覚えてしまった、父親の愛を独り占めしていた妹>も、死ぬ間際まで松子のことを案じて気にかけていたのに松子はそれに気付けなかったということ。また、松子を本当に愛した男たちも確かにいたのに、愛情の表現方法を間違っていたり、気付くのが遅かったりで松子を幸せにすることができなかったということ(うーん、またもちょっとイニス?)。松子のためを考えて彼女を捨てたやくざの龍は、松子の自分への愛情が、まるで神様が不完全で欠点だらけの人間を丸ごと愛してくれるようなものだったことを悟り、刑務所の中で号泣します(で、わたしも号泣)。
‘この人となら地獄に行っても幸せ’とまで思っていた男(やくざの龍)にも裏切られてしまった松子。彼女が晩年暮らしたアパートの近くには、故郷にあるのと似たような川が流れていました。泣きながらその川を眺め、もう誰も信じない、もうどうでもいい、と引きこもりのような生活をおくっていた松子ですが、あることをきっかけに‘あたしまだやれる!’という希望を持ちはじめます。ところがまた人生をやりなおそうとしたその時に、なんとも理不尽な理由で松子は殺されてしまいました。笙は思います、‘叔母さん、あなたの人生って・・・’。しかし最後には、笙も、松子自身も、彼女の人生はただ悲惨なだけのものではなかったということに気付くのです。観客もそれを教えられます。
良い映画というのは、ラストが本当に印象的(少なくともわたしが好きな映画にはほとんどその法則があてはまる)。
この映画のラストでは、まるで松子の魂が生まれ変わったかのような風が川面を吹き抜けていき、観客はその風と共に彼女の人生を振り返ることができます(監督の意図したところは違うのかもしれませんが、わたしにはそう感じられました)。詳しく書きたい気持ちはあるのですが、もったいないので(?)やめておきます。どんなに素敵なラストなのか、これはちゃんと自分の目で見てもらったほうがいいので。ただ、階段を幸せそうに歌を歌いながらのぼっていく松子がとっても綺麗だったこと、「お姉ちゃん、お帰り」「ただいま」という会話とその後の松子の笑顔に、彼女が本当に望んでいたささやかな幸せを教えられて、またも涙と鼻水で呼吸困難に陥ってしまったということは強調しておかなければなりませぬ。
「下妻物語」も大好きだったけど、「松子」はそれ以上でした。スタッフやキャストの方々にお礼を言いたくなる映画が、またひとつ増えてしまいました。嬉しい限りです。
‘不幸って何?’
人の幸せや不幸というのははたから見るだけでは判断できないんだなあ・・・。
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コメント
>かいろさん
TB、コメント有り難うございました。
早速こちらからもTB貼らせていただきました。
「松子」はかなり悲惨な話ですが、あのラストから、なんとも言えないすがすがしさを感じました。決して後ろ向きにならない松子の超ポジティブシンキングを見習いたい…とは思わないけど(苦笑)
ホントにいい映画でしたね。
またおじゃまします〜
投稿: Boh | 2006年6月15日 (木) 01時46分
かいろさん、こんにちは。
私も昨日、『松子』観てきました。またまた気が合いますね(笑)
TBトライしたのですが届いていないようです。同じくBohさん宅にも送信できません、やはりココログにはTBできないのかもしれません??残念です。
『松子』エントリをアップしておりますので、お暇な折にでも遊びに来て下さいね。お待ちしております。
ではでは。
投稿: 真紅 | 2006年6月15日 (木) 11時30分
こんにちは。
こちらにお邪魔するのは初めてです^^
エネルギッシュな映画でしたね。
キャスティングも見事でした。
(クドカンの屈折している物書きが凄かった)
でも、中谷美紀に関してはちょっと思うところがありました。
熱演なのにもどかしいというか…
TBできるかな…ソネブロ絶不調だし。
(えっと、勤めていた「高校」ではなくて「中学」では…
無粋な指摘、ごめんなさい)
投稿: miyuco | 2006年6月15日 (木) 11時56分
こんにちは。ブログでは初めましてです。
思い切ってコメント残します・・・ちょっと緊張するね。
場違いだったらごめんね。
松子、見たいけど怖い・・・というわけで未見です。
でも見て良かったという話をよく聞くので、その
迷いは深まるばかり。
見たら感想を伝えますね~。
投稿: ひらま | 2006年6月15日 (木) 17時12分
Bohさん、真紅さん、miyucoさん、ひらまさん、コメントありがとうございます!まとめてお返事させてくださいませ。
・Bohさん
TBありがとうございます!あのラスト、本当に素敵でした~(しつこい)。映画に携わった人たちの、松子への愛情が感じられました。大げさでしょうか?わたしも松子を見習いたいとは思いませんが、なんだかんだいって彼女はやっぱり愛されていたので、そこはちょっとだけうらやましいような・・・あら、こんな観方ではいけないのですかね?それではこの辺で。またお邪魔させてください。
・真紅さん
うわー、本当に気が合いますねー。真紅さんのストーカーになった気分です、フフフのフ(不気味)。こちらからTBさせていただきました~。真紅さんからのTB,いつか届きますように・・・。そして素敵なお母様によろしくお伝えくださいませ。(一度お母様とも映画のお話をしてみたいわたくしでございます☆) それではこの辺で。
・miyucoさん
こんにちは!TB&コメントありがとうございますー、嬉しいです!
中谷美紀、わたしは今までそんなに好きではなかったのですが、この熱意はやっぱりすごいなあと思いました。そして瑛太も柄本明も黒沢あすかも伊勢谷も香川照之もクドカンもひとりも良々さんも、このまま行くと全員の名前を書きそうなくらいみんな良かったです。ほんとにキャスティングの勝利ですね。はっ、しかし中学なのですか?うーん、確認を怠りました・・・、はずかしい~。それではこの辺で。またお邪魔させてください。
・ひらまさん
あなたは・・・もしかして・・・○○さんですか???わーい、コメントありがとうございますー。これからもたくさん書き込んでください、お待ちしておりますう~。
「松子」、観たほうがいいですよ。しかも映画館で観たほうがいいです。しかしちょっと覚悟がいるかも。けっこうエネルギーもいるかも・・・。観たらぜひ感想聞かせてくださいね。それではこの辺で。またメールしますねー。
投稿: かいろ | 2006年6月15日 (木) 23時05分
いやー凄い映画でしたねえ。
長年映画を見ていますが、こんな泣かされ方したのは初めてです。
女性に暴力をふるうという、一番嫌いな映画の要素があって、引いてみていたのですが、いつしか松子の心理に感情移入して・・・ついに号泣(笑)。ああ、女性っていうのはこうしてダメ男にくっついていくんだ、と妙に納得し、最後は涙に暮れつつも、なぜかやさしい気持ちに。
フロイト的な心理学、哲学的ともとれる深い描写にも見事やられてしまいました。とにかく、この監督、天才だわ~と思った次第なのです。中島監督の次回作、楽しみです♪
投稿: yoshi | 2006年7月13日 (木) 20時22分
yoshiさん、こんにちは!
>とにかく、この監督、天才だわ~と思った次第なのです。
ほんとです!ただものではないと思います。パンフレットを最近買ったのですが、この映画はいろいろな点においてこれまでの邦画に比べて‘異常な’映画だったみたいです。スタッフやキャストの方々の並々ならぬ苦労の結果がこの作品なんだなあと改めて思いました。
映画の中で風が吹いてキーホルダーの鈴(?)がチリーンと鳴るたびに、うるうるしてしまいます。
それではこの辺で。ありがとうございました!
投稿: かいろ | 2006年7月13日 (木) 21時11分
かいろさん、こんにちは。
TBとコメントありがとうございました!
そちらでも再上映があるのですね。是非行って下さい。何度みても面白いです。結局5回観た自分が保証します(笑)。
これだけの出来の作品だがら多分ウチでDVDなどで観ても面白いと思うけど、やはりこの映画は劇場ですよね!
投稿: 発生 | 2006年7月20日 (木) 23時13分
発生さん、こんにちは。TB&コメントありがとうございます!
>これだけの出来の作品だがら多分ウチでDVDなどで観ても面白いと思うけど、やはりこの映画は劇場ですよね!
はい、全くそのとおりです~。今度内山理奈主演でドラマになるそうですが、かなり不安が・・・。この映画とは別の作り方でこの映画以上のものを作ることができるんでしょうか???無理だと思うのですが。
3回目、必ず行きますね!発生さんも6回目いかれるのですか?それではこの辺で、ありがとうございました。
投稿: かいろ | 2006年7月20日 (木) 23時37分