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2006年5月30日 (火)

僕の大事なコレクション(3)

toshi20さんのレヴュー:
http://d.hatena.ne.jp/toshi20/20060511Illuminated_0528_3_2

以下ネタばれ驀進です。

リスタに案内してもらってついに見つけたトラキムブロド。そこには “トラキムブロドの村民を偲んで”という内容の文章が刻まれた石のプレートが一枚あるだけで、あとは草原が広がるのみでした。リスタはそのプレートの前で、旅の途中で道行く人に尋ねても、誰一人としてその名前すら知る者はいなかったトラキムブロドの、今ではもう彼女しか知らない歴史<村人たちがどのような迫害を受けたか、自分の妹がどのようにして殺されたか>を、ぽつぽつと語ります。その話を、三人はただ聞くことしかできませんでした。

ジョナサンは三人兄弟の真ん中。どちらかというと社交的ではなく、口数も多くなく、自分の気持ちを表すのが苦手なように見えます。家族に関するものだけでなく、食べようとして落としてしまったじゃがいもや畑にいたバッタだとか、一風変わったものまで集める彼にアレックスは尋ねます。「なんでそんな物まで?」ジョナサンはたった一言。「忘れそうで怖いから」 このあやふやでいて印象的な答えが、忘れ去られようとしているトラキムブロドに重なります。
ジョナサンの祖父サフランが亡くなったのは、ジョナサンがまだ4,5歳の頃(だったと思う)。その時もう弟が生まれていたかは分かりませんが、なぜサフランはあの古い写真を自分の息子やジョナサンの兄(もしくは弟)ではなく、ジョナサンに託そうと思ったのでしょうか(サフランが生きている頃にあのペンダントヘッドに興味を示したりしたとか)?
わたしは、彼が‘この子ならきっとこの二つの品物に隠された大切な意味を感じ取り、もしかするとトラキムブロドを探し当ててくれるかもしれない’と考えたのではないかと思います。実際そのとおりになりました。

Illuminated_0528_2 そしてそれだけでなく、この旅のおかげで出会った、‘忘れるのが怖い’と言う青年・‘過去のことなど考えたこともなかった’青年・‘過去を忘れようと努力してきた’老人・‘過去を守ろうとし、過去と共に暮らしてきた’老女。彼らはお互いに影響を及ぼしあうことになりました。
リスタはトラキムブロドのことを次代に伝えることができ、そして戦争が終わったのを知って、これからは外に向かって生きてゆくでしょう。おじいちゃんは過去を受け入れ、自分の人生に自分で決着をつけました(人生に初めて満足しながら)。

別れ際、リスタはジョナサンに指輪(!)を手渡します。それはアウグスチーネの結婚指輪でした。トラキムブロドの村人たちは殺される前に、村の近くを流れる川の川岸に大切なものを埋めていたのよ、と言って。
彼女はジョナサンとアレックスに、「アウグスチーネはなぜ指輪を埋めたのだと思う?」と尋ねます。それぞれ‘生きていた証に?’、‘誰かに見つけて欲しくて?’と答える彼ら。しかしリスタの考えはこうでした。
‘あなたたちをここに導くためだったんじゃないかしら’
(ここでわたしはBBMを、あの2枚のシャツを思い出したわけです。パンフレットの川口敦子さんの評論から引用させていただくと、 “老母に促され2階に上がったイニスはジャックの部屋、その窓辺に座り彼の見たはずの窓外の景色に目をやる。と、その姿を切り取る視線がクローセットの中からのそれに変わる。あたかもそこにいるジャックがクローセットの中へ、そこにある大切なものへと誘うかのように”・・・こじつけかもしれないけど、わたしはこのリスタのせりふを聞いてBBMを思い出し、二重の意味で泣かされてしまったのでした。あーやっと書けた、すっきりした。)

Illuminated_0508_6 その後おじいちゃんの自殺を経て、二人と一匹になった彼ら。旅は終わりました。ウクライナの駅(?)で彼らは別れます。でも、別れたあとも彼らはどこかでつながっていました。
旅の途中でアレックスがシャツを裏表に着ているのをジョナサンが指摘するなにげないシーンがありますが、それがラストに意味を持ってきます。
アメリカに戻ってきたジョナサン。空港で彼は、ウクライナで出会った人びとがここアメリカにもいる、というような感覚を覚えます(うまく文章にできてないんだけど、とっても素敵なシーンです)。そのシーンにかぶさるアレックスのモノローグ、これもまた素敵。
“過去は現在のすぐ隣にあって裏から表を見ている。そう考えると俺の人生も君の人生の隣にあるのかもしれない”(うろ覚えだけど)
最初はジョナサンのことをこの旅を本にしようとしている作家だと勘違いしていた、そのアレックスのほうが、この旅について書いているように(この映画はアレックスが旅を思い返して文章にしていく、という形になっています)。
そして離れたところにいるふたりがトラキムブロドのそばにあるブロド川の川岸の砂を持って、それぞれ祖父の墓の前で微笑んでいるように。

この、重い過去の出来事を語りながらもおとぎばなしでありコメディである不思議な映画は、最後、トラキムブロドがあった場所に作られた墓に、アレックスたち家族が祖父を埋葬するシーンで終わります。父と母が墓を後にし、アレックスとその歳の離れた弟も立ち去り、その場を離れがたそうにしていたサミーデイヴィスJr.Jr.も、アレックスに呼ばれて走っていく。兄弟もそれを追いかけて走り出す。
彼らの人生はこれからも続いていくのだというこのラストを観て、自分が今悲しいのか嬉しいのか分からなくなりながら号泣してしまったわたしでした。

Illuminated_0508_3 「僕の大事なコレクション」
EVERYTHING IS ILLUMINATED
(2005 アメリカ)

‘世界にはあなたの発見を待っている“もの”がある’

わたしを待ってるものって何だろう?果たしてあるのかな?

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コメント

はじめまして。TBとコメントありがとうございました。
この映画、本当によかったです。
前半笑って、後半泣いて・・・・。
今ある自分は 過去から連綿と続く歴史の上に
生きているのだなぁ なんて思ったりして。
上映館が少なかったので、DVDが出たらたくさんの人に見て欲しいですね。

投稿: kino | 2006年8月10日 (木) 02時15分

kinoさん、こんにちは!TB&コメントありがとうございます!

>今ある自分は 過去から連綿と続く歴史の上に
生きているのだなぁ なんて思ったりして。

はい、本当にそうです!ジョナサンとアレックスは、その縦(時間)のつながりと共に、国を超えた横のつながりも感じることができたんだなあと思いました。羨ましいです。kinoさんのおっしゃるとおり、もっともっとたくさんの人に観てもらいたい映画ですよね。
それではこの辺で。ありがとうございました!またお邪魔させてくださいませ。

投稿: かいろ | 2006年8月10日 (木) 22時22分

あけましておめでとうございます★
そしてTB&コメント有難うございましたぁ~~とんです。はじめまして。
「いい男バトン」考案者様なのですね~~~お陰さまでとっても楽しませていただきました。有難うございます。
悠雅様のレビューから飛んで覗きに来た事があったのですが、コメント残さず失礼しましたぁ(笑)

「僕コレ」良かったですよね~~。
私はDVDでも田園風景を堪能できたので映画館で観たらもっと素晴らしかったろうな、と思います(^.^)
本当に私の「コレクション」に加えたい映画です★
共感を持つ方がいらっしゃると小躍りしたくなりますね~~♪嬉しいです。
未公開シーン、ちょっとイメージが狂っちゃうかもしれないけど^^良かったら御覧になってみてください☆

投稿: とんちゃん | 2007年1月 3日 (水) 10時20分

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